普通の恋愛
これにて完結!第五話
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気がついたら好きになっていた。
それはもう大好きと言って差し支えないほどの感情で。けれど持ち前の性格と恋愛経験のなさが仇となった。
「お二人は好きな食べ物とかありますか?」
「広島焼」
「そうですか。 じゃあ今日はエイジの好きなオムライスを作ります」
落ち込んだ。
なんで素直になれない。こんなんじゃ好きになってもらえないどころか逆効果じゃないか。絶対イヤな女だと思われてる。そんなの当たり前だ。
「新しいニット帽買ったんですか?」
「いいだろ」
「普通です」
そんな繰り返しだった。
たまにこっそり、「ねーエイジ福田さんの新しいニット帽いいよねー」「興味ありません!」「だよねー」なんて会話をしてみたり。でもそれじゃあ伝わるものも伝わらないよね。広島焼の作り方は調べたけど一回も作ってないし。
だから、
「好きだ」
言われて。
嬉しかった。
本当に、心臓がドキドキして、飛び出しちゃうんじゃないかと思った。
付き合い始めてからも彼は本当に忙しくって、エイジと負けず劣らず漫画バカで。デビューが決まってからは会える頻度も減ってしまった。
寂しいけど、時たま過ごせる二人の時間が大切で。
「真太さん」
「なんだ?」
「好きです」
噴き出したコーヒーを拭う為にタオルを差し出した。
そんな日々。
普通で、特別な私の恋愛。
「ツンデレって言われたから、デレをがんばってみました!」
なんてね。