ずっと一緒に、

夜空には星が輝き、中天に月がかかる。
───静かな夜だった。
静かな、二人きりの夜。
砂漠の野宿にも慣れ、こうして空を見上げる余裕すら出来た。

「わし座の1等星アルタイルとこと座の1等星べガ……」

言いかけた瞬間背後から腕が伸び、胸に引き寄せられる。
はそれに頬を寄せ、呟いた。

「でも正確に今日が何月何日なのかは、わからない」

一度滅びてしまったこの世界にはないもの。
空を見上げる。降るように輝く星屑はいつまでたっても褪せない美しさを持っていた。の生まれた時と場所には存在しなかったもの。
それを揚羽と一緒に見ている。

「もし正確な暦があったら、何がしたい?」
「七夕のお祭りがしたいな……そして短冊を書くの」

彼の問いに、間を空けて答える。次いで髪を撫でる掌の暖かさに瞼を閉じた。

「東北でそんな祭りが残ってると聞いた事がある」
「うん」

襲い来る眠気に、毛布を引き寄せた。

「やってみるか?」
「ううん、いい」

もぞもぞと彼の懐に潜り込んで、腕を枕に眠りに落ちる。
そして、

「一番の願い事は、もう叶ったから」

最後に小さな声で呟いた。