ふたつの世界、ふたりの世界

水着の試着

の鼻歌が聞こえる。
扉越しに、何かを探す物音がした。
俺は平静を装ってソファーに座り煙草を吸っている。
ふぅ……煙を吐き出す。
ゴソゴソゴソ、タンスを漁る音がした。
煙を吸い込む。
タンスを閉める音がして、

「あった!」

反射的にソファーから立ち上がりかけるのを堪えた。
そして笑顔で扉を開けた、に視線を合わせる。

「水着あったよ」

広げて見せたのはドット柄の三角ビキニ。
こんなものを他の男もいる場所で着たのか。こんな、胸の谷間も白いお腹も内ももの間すら見えてしまいそうなものを!?俺ののこんな姿を見て興奮しない男がいるか?いるわけないだろ。
不機嫌になったのを察したのか、彼女はビキニを振りながら、

「買ったんだけど結局着なかったんだよね。でもかわいいでしょ?」
「……ん。じゃあ一度着てみたほうがいいんじゃねえか」
「そうする、待っててね」

水着を持って自分の部屋に戻った。
……別にここで着替えてもいいのにな。

が水着を探していたのには理由がある。
来月の沖縄旅行のためだ。
温泉旅行は彼女に出させてしまったし、北海道はセルティからのプレゼント。今度こそは俺が!とがんばった。煙草の本数を減らし標識や自販機破壊も極力控えた。
貯めた金で、旅行に誘ったのが先月の出来事。
彼女の喜び様はすごかった。数秒間固まり、次いで飛びつく。「静くん大好き、ちゅっ」ちゅっどころではなかった。ちゅっちゅちゅ好き好き愛してるちゅーって感じだった。

にやけるのを堪え、もう一服。
数分前から衣擦れの音が聞こえなくなった。着替え終わったのか?女の着替えがどの程度かかるのか未だによくわからない。
さらに待つ。
しかしいっこうに出てこようとしないので、

、着替えたなら見せろよ」
「う、うーん」

返事をしながらドアを小さく開く。
……それじゃ見えないだろうが。
立ち上がって、やや強引に開いた。
すると、

「きゃ、静くんっ!」

頬を赤く染め抗議する視線と、

「……すっげえ」

おっぱい。
じゃなくて谷間?やっぱりおっぱいか。
弾力ある白い胸が水着からはみ出しかけ自己主張していた。なんだ、ムチムチ?ムラムラ?そんな感じだ。
あ、よく見ると下乳も。

「うわーん、見ないで!」

見るなっつったってよ。
しかも胸だけじゃなく、お尻のほうも布地がやや足りていない。
少し大きめの(よくわからないが大きい方らしい)丸い曲線に食い込む生地。少しはみ出しているところがエロい。
胸元は手で隠そうとして逆にぷにっと変形して……。

「静くん!!」

揉もうとしたら怒られた。
少し涙目のを見て自制心を取り戻す。

「泣くなよ」
「だって、太った−!」

しばらく仕事が休みだったから!?静くんだってお休みの日は一緒にごろごろしてたのに全然太らないなんてずるい!と抗議してきた。胸元を押さえたまま。

「……大して変わらないだろ」
「全然違う!」

女ってわかんね。
たとえ太ったんだとしてもの場合胸と尻に肉がついだけなんだから別にいいじゃねえかよ。
口に出したらさらに怒られた。
女心がわかってないとかなんとか。
小一時間ほど太った!と嘆くのを慰めた。
はみ出す白いふくらみを眺めながら。

「静くん聞いてる!?」
「……ん」

今日はおっぱい祭りだ……。
呟いてはみ出している部分をつついたら、正座させられた。