ふたつの世界、ふたりの世界
背中合わせ
視界を埋めるのは緑の木々と芝。そして太陽の光に反射して輝く青い河川だった。柔らかい風が頬を撫で、眠気を誘う。深く息を吸い込むと新緑の香りがした。
土手の上ではランニングをする人、犬の散歩をする人、走り回る子供たち。平和な光景に静雄はあくびを噛み殺した。
背中から甘い声音が話しかける。
「暖かいね」
「だな」
日差しが降り注ぎ、背中合わせの温もり。
「はぁ」
気の抜けた声と共に背中にかかる重さが増す。重ねていた手のひらを恋人つなぎに絡め、彼も力を抜いた。顎を上向かせると太陽が少しまぶしい。胸ポケットのサングラスを取り出した。
「ひなたぼっこ日和だよな」
「ねー」
会話という会話もなく、ぼんやりと過ごす休日の午後。
の手作り弁当で腹がくちくなった。
幸せだなあ……静雄は呟く。くすくす笑う彼女。
照れ隠しに伸びをしたらがつぶれた。
「痛い」
「悪りい!」
恨みがましい瞳に慌てて謝る。
そんな喧噪も幸せの証。
日差しに包まれて、ふわりと笑った。