ふたつの世界、ふたりの世界

ほっぺぷにぷに


「ほっぺぷにぷにしたーい」

家に帰るとがソファーの上で身もだえていた。
頬は上気し、瞳は輝き、柔らかそうな胸がソファーに押しつけられ形を変えた。蝶ネクタイを緩めながら、心で叫ぶ。

揉みたい!

でも口に出すと怒られるので黙って写真を覗き込むと、傷だらけで睨む小学生が映っていた。

「……俺?」

紛れもない自分の姿に首を傾げた。
疑問に思いながらもワイシャツを第二ボタンまで外して、横に腰掛ける。するとが寝転んだまま見上げた。

「静くんのお母さんからいただいたの」
「へえ、っていつお袋と会ったんだ!?」
「昨日いらしたわよ」
「お袋のやついつの間に……」

頭を抱える。
すると不思議そうな顔をして起き上がった彼女。
さらりと髪が流れ、大きな瞳が瞬いた。白い肌がうっすら上気しているのが色っぽい。
さらに俺の膝の間に手をついて、顔を覗き込んだ。

「可愛いのに」
「可愛いって言われて嬉しがる男がいるわけないだろ。しかも昔の写真だし」
「……今も可愛いよ?」
「え、あ、いや……俺としてはカッコイイの方が……」

言いよどむと、

「えいっ」

頬を突かれた。
ふにふにされる。

「んだよ」
「小学生の静くんは可愛いけど、今の静くんはもっと好きだよ」


歓喜余って手を出す。

「ひょい」

そしたら言いながら避けられた。
ショックだ。
しかも尻尾が垂れたわんこみたいとか言われた。俺は犬じゃねえ!
なんで避けるんだよ……本気で凹むぞ。

「……?」
「胸も揉もうとしたでしょ。帰ってきて早々何考えてるの」
「え?」

目をそらすと、ジットリした表情で見つめる。
次いで、「静くんは仕方ないな」と呟いてため息をついた。
───今だ!
隙を突いておっぱいを人差し指でつついた。

「何も殴ることないだろ」
「言ってもわからないんだから仕方ないでしょ」
「それはだって……揉んでないだろ!?」
「つついたら同じでしょう!?」
「全然違げえ!」

言い争う。
床に滑り落ちた写真が呆れた顔で見上げているような気がした。