ふたつの世界、ふたりの世界
お花見の話
*心持ちエロいかも
凍えるように寒い冬も終わり、春が来た。
冬の間は閉じこもりがちな私達も、暖かくなれば違う……違うはずだよね?
テレビ画面を彩る桜を見て決意した。
「静くんお花見しよう」
「……ん?んー」
しかし返事は精彩に欠けている。
人混みが嫌なのかと思って視線を移すと、
「」
重さにつんのめりかけた。
抱きつくわんこ。
耳の後ろを撫でると覆い被さるように抱きついて、首元に顔を埋めた。
次いで吐息が耳たぶにかかる。
「ひなたぼっこは好きだけどよ。んで桜は嫌いじゃねえ」
「うん」
「だけど外だといちゃいちゃできないだろ?」
徐々に体重がかかる方向が変わり、ソファーに押し倒される体勢になった。静くんは見た目は細いが、身長がある分それなりに重い。
されるがままソファーに沈み込んだ。
「……外でも結構いちゃいちゃしてると思うけど?」
「してねえよ」
不満そうに鼻を鳴らした。
手を繋いだりちゅーしたり。
抱きついたり抱きつかれたり。
それらは静くんの中では「いちゃいちゃ」に入らないらしい。
つまり、
「静くんにとっていちゃいちゃってエッチすることなの?」
核心を突き、今にも「事」を始めそうな彼を見上げる。
しばし見つめあい、ぶーっとくちびるを尖らせた静くん。
「ダメなのかよ」
「ダメってことはないけど……」
じゃあいいってことか!?
目を輝かせ、わきわきしている大きな手を払った。
「今はダメ」
「んでだよ?」
「ダメだからダメなの。ね、人が少ない穴場のお花見スポット見つけたの。行こう?」
押し倒されたまま可愛い子ぶる。
静くんは生唾を飲み込むと、見るからにがんばって息を整えてから、上半身を持ち上げた。
「仕方ねえな。途中でなんか甘い物買っていくぞ。あと酒飲みすぎるなよ」
「はーい」
しかし私は起き上がろうとするのを、上着の胸元を掴んでとめる。
「ん?」
ふわりと前髪が揺れた。
視線を合わせようと屈めたので、首の後ろに両手をかけて引き寄せる。
「んっ」
暖かいくちびるに触れた。
最初は静かに、徐々に熱く。
唾液の混ざり合う音とくちびるが溶け合う音が部屋に響いた。
「静くん」
「……ん?」
余裕が消えた瞳。
見つめられると背筋がぞくぞくした。
捕まえられる前に、身体をくねらせて下方向に移動する。
「?」
「エッチはお預けって言ったでしょ」
「え……っとそれっはつまり」
お腹の所まで下がったところで背中に手を回し、体勢をひっくり返した。静くんのお腹に顔を埋める形で上になる。
抵抗はない。頭上から期待に満ちたため息が聞こえた。
それに応える形で、ズボンのチャックに指を這わせる。
そして、
□□□
「おい、飲み過ぎんなって言っただろ」
「静くんはお団子食べ過ぎ。一個ちょうだい」
「ったくしかたねえな。あーんしろ」
桜花舞う中、レジャーシートの上で見つめ合って、微笑んだ。