ふたつの世界、ふたりの世界
あの二人、付き合ってるんだよ
*嘘の内容5題より
「門田君と狩沢さん」
足の裏の中心を親指でもみほぐしていると、はそんなことを呟いた。
彼女の部屋はものが少なくて、いかにも女らしいものといえば、俺が前にプレゼントした猫のぬいぐるみくらい。
でも汗臭さなんてかけらもない、ほのかに良い匂いがして。肌の匂いとは少し違う、思わず深呼吸したくなる香りに目を細めた。
そして寝転がって順番にマッサージ。最初は力加減がわからなくて、怖かったが今では慣れたものだ。
「あ? 門田とあの帽子のねえちゃんか」
「そうそう。静くんちょっと力入れすぎ」
「おう」
次は足首に移動して、以前教わったツボを揉み揉みする。
「あっ……静くんそこ、気持ちいい」
背筋をびくんと跳ねさせて、吐息を漏らす。
俺もビクンビクンしたくなった。でも我慢する。生唾を飲み込み、ふくらはぎの裏側を下から上に押した。
引き締まっているのに肌は滑らかで、弾力まである。一言で表すなら、おいしそうなふくらはぎだ。
吐息混じりにが言う。
「んっ……意外?」
「いや? のふくらはぎは前からおいしそうだと思ってたけど」
「もうっ違うよ、門田君と狩沢さんの話」
なんだそっちかよ。
再び目を細めて、天上を眺めた。
「そうだな。あいつらは誰とどうこうっていうより仲間って感じなのかと思ってた」
「そうだよね。だって嘘だもん」
「あ?」
膝裏を少し強めに押すと、「にゃっ!?」という猫みたいな悲鳴と共に飛び起きた。
「そこはもっと優しくってお願いしたでしょ」
「お前が変な嘘つくからだろ」
「うう……静くんがいじめる」
どう考えてもこいつが悪いよな?
けれどベットの上で、タンクトップは肩からずり落ちかけていて、おっぱい柔らかそうで、太ももは柔らかい。しかも上目づかいで涙目、絶対嘘泣きだけど可愛いすぎるだろう! 卑怯だ。
こうなったら俺にだって考えってもんがあるんだ、食ってやるからな!
「いただきます」
手を合わせると、チョップで間を切られた。
「いただかないで!」
頬を紅潮させ、ファイティングポーズを取った彼女。
こいつ本当に年上なのかな……。
後頭部を掻いて、いただきますか、マッサージか、しばらく迷った。