ふたつの世界、ふたりの世界

ストロベリーデイズ!

オフ本で発行予定の設定です。
・ふたりは高校生
・夢主が同い年で平和島家に居候中
・このお話は交際後です





ずり落ちかけた鞄を背負い直し、夕暮れ時の道を歩く。
今日は天気も良かったし、珍しく不良も絡んでこなかった。
悪くない一日だ。
考えながら玄関のドアを開ける。

「ただいま」

しかしお袋の脳天気な声は返ってこず、リビングの扉を開けるとソファーでくつろぐ少女の姿。
はポッキーをくわえたまま、顔を上げた。

「おかえり」
「お袋は?」
「おばさんは買い物、すぐに帰ってくるって」

膝の上で雑誌を捲りながら答える。俺はこぶし一個分開けて横に座り、彼女を眺めた。
今日は制服のままだ。ワイシャツの間から覗く華奢な鎖骨と柔らかそうな膨らみを思わず凝視した。肉感的な身体に生唾を飲み込みたくなるのを我慢する。

「静くん、どこ見てるの」

でも何故かバレた。
猫の様な瞳が覗き込む。次いで前屈みになったせいで白い谷間が見えた。
冷や汗を掻く。
このままでは理性が飛んでしまいそうだ。
しかもブラジャーが少し透けている。今日は水色か……。
……。
無理だ。辛抱たまらない。
決意して、見上げてくる瞳を見つめ返し、肩に両手を置いて抱き寄せた。

「……静くん?」

すると彼女の声が震えた。
けれど、躊躇せず言う。

、ちゅーしよう」
「ダメ」

即答だった。
対して俺はくちびるを尖らせて抗議する。

「んでだよ。何もエッチしようって言ってるわけじゃないんだぜ」
「当たり前でしょ! ここがどこだと思ってるの。おばさん帰って来ちゃうよ」

本当はエッチがしたいけど、我慢したのに。
でも俺はキスもダメなんて嫌だ!
抱き寄せて、顎に手を当てる。すると静止の言葉が消えた。

「……だめ」
「わかったから目、閉じろ」

さらに顔を近づけると、瞼が伏せた。
まつげが小刻みに揺れてくちびるが少し震えている。
のくちびるは甘い。何度食べてもまた欲しくなる。甘い果物みたいだ。
だからキスする。
あと少しと思った瞬間、

「ただいま。あら静雄も帰って来てるのかしら」

玄関ドアの開く音と同時にお袋の声がした。
慌てての身体を離し、勢いよく立ち上がった。次の瞬間、リビングの扉が開く。

「ただいま」
「お、おかえり」
「おかえりなさい」

いつの間にかソファーの端っこまで逃げていたが次いでお袋に答える。しかしお袋は両手に買い物袋を抱えたまま、不思議そうな顔をした。

「静雄、何してるの?」
「た、体操」

イチニサンシ。
身体を伸ばす。
を横目で見ると、小憎らしいほどいつも通りだった。
さっきまであんなエロい顔してたくせに!?

「今は若い子の中で体操が流行ってるの?」
「ええおばさん、そうなんですよ」
「あらーじゃあ私もやってみようかしら」

お袋は脳天気に微笑んで台所へ消えた。
少しの間の後、がため息をつく。

「もう少しましな誤魔化し方なかったの?」

ジト目で見られたけど、普通は急に誤魔化すなんてできないと思う。
部屋にトボトボ戻り、お預けになったちゅーはいつ回収出来るのだろうと肩を落とした。