みんななかよし☆


「静くん、今からお出かけ?」
「ああ、新羅とセルティが鍋やるから来いって……も一緒に行くか?」
「いいの?」
「知り合いできるだけ呼ぶってメールに書いてあったから、いいんじゃないか」
「でも私呼ばれてないよ?」
「……携帯、教えたのか?」
「ないね」

じゃあ無理だろ。
だね。
と、言うわけで今日は季節外れの鍋パーティーです!



肉 肉 野菜 肉 野菜
   肉 肉 野菜 肉 野菜
とうふごまだれ やさいはポンズ
   おにくにつけるは あぶらみしだい



会場(新羅くんち)は妙な熱気に満ちていた。
……みんな普段ちゃんとご飯食べてないのかしら。
それほどまでに鍋に向かってがっついていた。……あ、私の食べようと思ってたお肉とられた……。
……静くんが楽しそうだからいいか。
寂しくなった皿上を見て立ち上がった。

「美香ちゃん、このお肉静くんたちの方に運んでもいい?」
「はい、もちろんです!」

お礼を言って、静くんと門田くんの間に割り込……もうと思ったけど、話し込んでたからやめた。何故私の座るスペースを開けておかないかなぁ。女心のわからんやつめっ!
でも可愛いから許す。
そんな自問自答をしながら彼らの会話に耳を傾けた。
……。
……。
……。
静ちゃん可愛い!可愛いは正義!何、金髪に染めたのってトムさんの影響だったの!?っていうか勧められた時そんなことを!?ついでに父母の呼び方ってそれだったの!?中学生静くん……私を萌え殺すつもり!?
戦慄を禁じ得なかった。

っちお腹抱えてどーしたの?」
「狩沢さんわかってないっす。あれは萌えの究極の表現ですよ。彼女は今全身でそれを表してるんです!!」
「えーでも前に二人でサモエド仮面×ワンワン刑事について語り合った時は……」

そんな会話を尻目に、静くんの背中にぴったり張り付いた。

「おわっ! なんだひっつくな」
「無理、いきなりチューしなかっただけでも褒めて欲しいくらい、今私の心は乱れています」
「……何かあったのか?」

誰に何を言われた!?表情にみるみる険の色が広がる。
私は冷静に膝に乗り、正面から抱きつき、首を横に振った。

「違う。ちょっと静くんへの愛情を新たにしてただけ」
「……そ、そうか」

手から箸と器を奪って、お肉をふーふーする。次いで口元に運んだ。
体勢上、ちょっと難しい。

「はい、あーん」
「いや、お前……」
「あーん」
「だから……」
「あーんしてくれなきゃ泣く」

上目づかいで見上げて言う。
すると頬を少し赤らめて、口を開けた。

「あーん」
「……あーん……」

目を反らして、咀嚼。

「おいしい?」
「ああ」
「自分で食べたよりおいしい?」
「……うまい」

満面に微笑むと、大きな掌が頭を包み、髪をぐちゃぐちゃにしながら撫でた。




「……何度見ても、慣れないもんってあるんだなぁ」
さんは年上世話女房攻めですね!!」
「違うよゆまっち、っちは真性のSだから世話女房と見せかけた貞淑風女王様攻め×ワンコ受けだよ」
「いやそれは狩沢さんが間違ってるっす! 彼女は男の夢を体現したような……」

門田くんが飽きれてため息をついた。
その光景はみんなはなかよし、を体現するがごとく。

「今度は静くんが食べさせて」
「……あーん」
「あーん」
「うまいか?」
「静くんの次くらいにおいしい!」

ぶはっ。
近距離の数人が飲み物を噴き出し、静くんは咽せた。
……うん?
何にせよ、鍋パーティーはとても楽しく、セルティと新羅に感謝しきりの一夜の出来事となったのであった!