[ 膝に乗っかって ]

彼女は不意をつくのが得意だ。
気を抜いていたり、仕事のことを考えていたり、簡単に言えば思いもよらぬ瞬間。

むにゅ、よじ。

音を立ててよじ上る。
どこを?
俺の膝の上を。
誰が?
のおっぱ……が。

「ふ、普通に座ればいいだろ」
「えー? そろそろマンネリかと思って」

ソファーに座っていた。すると足下に寄ってきて、コテっと床に座り込んだと思ったら膝に抱きつきヨジヨジ。やめろ、胸が当たってる……やっぱり止めるな。
よじ上り、膝の上に座り、笑顔。

「静くんって足長いよね」
「……あ?」
「思ってたより時間かかっちゃった。ほら汗」

言って俺の膝にまたがって、首の後ろに手を回した。
彼女の首筋を汗が一滴流れ落ちる。
反射的に、

「くすぐったい」
「だって、お前が汗かいたって」
「だからって舐めないの」

ぺちっと音を立てて頭を叩かれた。
次いで頬に当たる柔らかい掌。

「ん……」

閉じた瞳。
長いまつげに影が落ちた。
形よいくちびるが何かを待って閉じる。
ちょっとした悪戯を思いついた。

「……まだ?」

焦れて目を開けた瞬間、噛み付く様にくちびるを併せた。

「んっ!」

壊さないように慎重に。
だけど激しく。
「酸欠にする気!?」言って蹴られるまでその行為を続けたのだった。



*多分一時間くらい。