[ おはよ ]

朝日が閉じた瞼に差し一日の始まりをつげる。
しかし飲み過ぎでアルコールの抜けない頭は重く、覚醒を妨げた。
そして甘やかに耳をくすぐる声。

「朝だよ。起きて」
「……ん」
「静くん」
「可愛く……言ったら起きる」

むにゃむにゃと呟いて考えた。
───これ以上は無理か。
だっていつでも可愛いし。
思考したがしかし、彼女はいつだって上手だった。

「あ・な・た、朝ですよ。起きて」

必殺、新婚さんごっこ。
あっという間に覚醒した。
上半身だけ起き上がって微笑む頬に指先を這わせる。
喉元を撫でて、くすぐったそうに細められた瞳。

「……はよ」
「おはよう、ご飯食べる?」
「食べる」
「じゃあ……きゃっ」

抱きしめた。

「こらっ、悪戯しないの」
「やわらけぇ……」
「もしかして寝ぼけてる?」

答えず、力を入れすぎない様に注意しながら抱擁する。
当初は「もうっ」と言いながら腕の中で暴れていた彼女。しかしすぐに力を抜き、見を任せた。

「遅刻したって知らないんだからね」
「……だってが」
「私が?」
……が」
「うん?」

可愛いから悪いんだ。
言おうとして言えなくて、

「……

キスで誤摩化した。
柔らかい日差しがカーテンから差し込む。朝の出来事。