[目を閉じてキスのおねだり]

家に帰ったら静くんがぎゅーって抱きしめて、目を閉じた。

「玄関だよ」
「んっ」

キスして欲しいの?
問いかけると目を薄く開いて私のあごに手を添えた。

「……甘えんぼさん」

背伸びする。
腕を回すと、静くんの背中が期待で震えた。
もうちょっと。
かかとを限界まであげて。
少し届かない。
柔らかい髪に指を差し入れ、引き寄せた。

「ちゅっ」

言いながら軽く口づける。
離れようと背伸びをやめると、引き留めた腕。
抱っこされてるみたいだ。
見つめる切れ長の瞳に問いかける。

「足りない?」

耳朶をくすぐる甘いおねだり。

「……足りない」

強く抱きしめる腕と潤んだ瞳と、全身の全てで求めて。
静くんはわかってない。

「甘えんぼさん」

私がどれだけ好きか。
小さく笑って口づけた。