[頬に触れてキスの終わり]

はノってくると長い。
口に出して言うと、「じゃあ終わり」と拗ねるので絶対言わないが。

「……静くん……」

とろんとした瞳がやばい。
上気した頬に触れると見た目と変わらぬ熱さを持って。
膝にまたがった彼女の腰に手を回し、もう一度くちづけた。

「……
「静くん……好き」
「俺もが好き」
「……どれくらい好き?」

ちゅぱっ。
音を立てて離れて、問いかける。
砂のように髪が肩口を流れおち、誘惑した。
でも答えに困る。

「えっと」
「えっと?」
「すごく好きだ!」
「すごくってどれくらい?」
「……」
「むっ」

眉間にしわが寄った。
次いでむにっと頬を抓られる。

「どれくらい?」

焦った。
結果失言をする。

「バケツプリンより好きだ!」
「プリン?」

プリンはねえよ。
しかし口から出た言葉は取り消せない。

「どれくらいって難しいだろ。でもほら、プリンよりが好きで……いや食べ物と比べたわけじゃなくて……」
「……プリン……」

背中を冷たい汗が伝い落ちた。
すると鼻を抓まれる。

「怒ってないよ?」
「本当か?」
「うん」

言って深く口づけた。
後日、

「じゃーん」

家に帰ったらバケツプリンがあった。
思わず目を輝かせて見上げると、

「静くん、プリンと私、どっちが好き?」

エプロンで手を拭きながら首を傾げる彼女。
……やっぱり怒っていたらしい。
今度こそ即答した。

!」
「じゃあ一人で食べちゃうよ?」
「う……!」

すると心底嬉しそうな顔で笑って、

「嘘だよ、一緒に食べよう」

スプーンでプリンをひとすくいして、「あーん」と言った。