彼はどこの乙女だと突っ込みたくなるほど愛らしく、頬をほんのり上気させた。

「口うつしで食べさせてくれ」

煙草の匂いがするベットに腰掛け足をプラプラさせる。
次いで口内のあめ玉をかみ砕き、小首を傾げた。

「何を?」
「飴を!」
「……これ?」

ベットの上に放り投げてあった袋を差し出すと、勢いよく首を横に振った。

「そっちじゃなくて、俺はが今食べてるやつが欲しいの!」
「ごめん噛んじゃった」

あめ玉の欠片を舌先に載せて、あっかんべーの要領で見せる。すると何故か余計に鼻息が荒くなり、私にのし掛かってきた。

「……それでいい、つーかそれがいい」
「えー?」

ソファーならまだしも、ベットの上でこの体勢は危ないなと回避方法を考える。
でも思いつかない。
嫌じゃない。

「……静くんの我が儘さん」

顎に手を掛けて、くちびるを合わせる。
煙草の苦味にイチゴキャンディーの甘みが蕩けて、混ざり合う。大きな手が後頭部を押さえて、口を開いた瞬間を逃さず熱い舌先が口内に侵入した。
それがキャンディーの欠片をすくい取って、なめ回す。
奪われたそれがかみ砕かれる音と同時にくちびるが離れた。

「甘えな」
「静くんは苦い」

眉を顰めて抗議すると、百面相の如く表情が変わった。そして静くんは勢いよく新しい飴を口に含み、もう一度口づける。

「今度はきっと甘いからな」

本当は最初のキスも甘かった。
でも教えてあげない。
ベットが軋んだ音を立て、イチゴキャンディーの甘ったるい匂いが鼻先から香った。