サイケデリック静雄の来襲
サイケデリック静雄(DVD特典表紙絵)妄想。
個人的に希望している設定:ドSで鬼畜。フェロモン過剰。
静雄にデリ雄が憑依(?)しています。
微エロというか、途中まで微妙な展開です。攻めの静雄も書きたいぜぃ!と張り切った結果、どうしてこうなった。な一作。
家のドアが開く一瞬。
わずかな違和感を感じた。静雄が先に帰ってきていることは室内に灯る明かりでわかった。だけどどこかちぐはぐな。空気の違いに眉をひそめた。
けれど決意して足を踏み出す。
緊張に指先が震えた。
しかしソファーにはいつもの後ろ姿。
息をつく。
でも少しだけ違った。
バーテン服ではなく純白のスーツ。
首を傾げて、不安を消し去りたくて背後から抱きついた。
これで全部消える。
信じた。けれど、
「どうしたのその格……好?」
「よぉ」
振り仰ぐ。
すると違和感は増した。
同じ顔、同じ声。なのに違う。
彼はの身体を力任せに持ち上げて抱きしめた。
ピンクのストライプのシャツが視界に映る。
耳たぶに触れた温度に目を見開いた。
「静くん?」
「なんだよ」
「本当に……?」
「……じゃあ誰だと思う」
耳たぶを甘噛みして囁く。ぞくりと粟立った背筋、差し入れられた指先によって髪が乱れる。反対側の腕が強い力で抱き寄せた。
「痛いっ」
痣が残ってしまうほど。
首元にかけられた見覚えのないヘッドフォンからは早いビートが聞こえて。
愛しい顔には知らない微笑が浮かび、表情が引きつるのを楽しむように声を立てて笑った。
「あなた誰?」
「誰ってことはないだろ? 身体はお前の大好きな『静くん』だぜ?」
言いながら襟元を緩めた。シャツの狭間から鎖骨が見え隠れする。
次いで逃げようとした彼女の腕を掴んで、組敷いた。
の顔が見る見るうちに青ざめる。
「や、イヤ」
「なぁ……知ってるか?」
首筋を舐めあげ、妖艶に笑う。
静雄であれば絶対にとらない造形。
男は甘く残忍に囁いた。
「のイヤってすごくそそる」
彼女の胸元でシャツのボタンが弾ける音がした。
静雄であれば絶対にしない。だけど目前の男はたやすく。
は身体を捻って脇腹に蹴りを入れた。
「イヤだって言ってるでしょ!!」
でもビクともしない。
下肢からベルトを外す音が聞こえた。
半狂乱になって喚く。
「静くんじゃなきゃ絶対にイヤっ!!」
大粒の涙が溢れた。
瞬間、拘束がゆるむ。
次いで心配そうにのぞき込む「静雄」の顔が見えた。
「……?」
「ひぅ、静くん?」
「なんで泣いて……って俺ズボン脱いで……!? え、あ、なんで!?」
「うわぁーん!!」
は静雄に抱きついた。胸元に縋り付き子供みたいに泣きわめく。彼は混乱しながらも背中に手を回しさすった。
「泣くなよ」
「静くんが泣かせたんだもん、バカー!!」
もう一度抱きついた。
そして翌朝。
「トムさん、あの……あ、はいおはようございます」
携帯電話を右手に握り上司に電話をかける。
は静雄の胸元にしがみつき、離れる様子がない。
「その、実はが……えっとそのすごい熱で……はい、すいません。いや一日無理そうっす。すいません」
電話を切り、傍らの彼女に話しかけた。
「ほら、飯食おうぜ」
「……静くんが食べるなら食べる」
「じゃあ俺なんか買いに行ってくるから」
「イヤっ!!」
Tシャツの裾をぎゅっと掴んで離さない。
プラス上目遣い。瞳はかわいそうなほど赤くて思わず頭を撫でた。目を閉じてされるがままの様子が小動物みたいだと彼は思った。
「静くんがどっかいっちゃうならご飯食べない」
「いやでもさ」
「やだ、離れたらいやっ。……ダメ?」
首をかしげる仕草に、静雄は射抜かれた。
しかし今日は我慢。
もう一度頭を撫でて、
「わかった、じゃあ今日は俺が作るからな。失敗しても文句言うんじゃねぇぞ」
「言わない。今日のは静くんにくっつく係」
宣言通りに立ち上がった彼の背中にぺったりむにゅっと張り付いた。
窓から照らす光は温かく、湯気が風に揺れる。食パンの焼ける匂いが室内に漂った。