コミック版WORKING!!とのコラボです。
WORKING!!キャラ一言紹介。
小鳥遊宗太:可愛いものが三度の飯より好きな高校生。(基本的には)年上が嫌い。
種島ぽぷら:小学生のような見た目を持つ高校生。小鳥遊をかたなしと呼んでしまう。
伊波まひる:男性恐怖症で腕っ節がやたらと強い高校生。
轟八千代:常に帯刀をしている。店長の杏子さん大好き。
白藤杏子:店長。いつも食べてないと死ぬ。
佐藤潤:不憫なイケメン。八千代に惚れている。
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2011.03.16-2011.05.8
特急電車から降り、空港のカウンターへ向かう。
飛行機に乗るのは修学旅行以来、人生二度目だ。隣を歩くに緊張をさとられないように、リードすべく小さな手を握る。
それを花のような笑顔が迎えた。
「ん?」
「なんでもねえよ」
俺の彼女可愛い!
心の中で叫び、表面上は平静を装った。
なんと言っても今回はあれだ。
北海道旅行。
しかも……、
『旅行中怒らなかったらイイコトしてあげる♪』
イイコトってあれだろ。あんなことやこんなことをしても正座をしなくても済むってことだよな!?
鼻息が荒くなるのを堪えて、カウンターへ向かった。
事はセルティからもらった二枚の招待チケットに始まる。
なんでも商店街の福引きで当たったとか。
やったのか。
あいつ意外とそういうの好きだよな。
『フルフェイスじゃ飛行機に乗れないし、お前に譲る』
PADに打ち込みくれた。
最初はでかすぎるプレゼントに遠慮していたのだが、『先日が言っていた。お前と旅行に行きたい、と。だから遠慮せずに二人で楽しんで来てくれ』その言葉に甘えて受け取る。
セルティは本当に良いやつだよな。
今度何かお礼しないと……。
家に帰ってに相談すると嬉しそうな顔をした一瞬後に、「……でもセルティだって本当は新羅君と一緒に行きたいんじゃないかな」と悩み始めた。その顔を見て、
「行こう」
お土産とかそういうのいっぱい買えばきっと喜ぶよな?あとほら料理とかさ、そういうの教えてやれよ。
彼女の両手を包み込むように握りしめて、正面から見つめる。
透き通るように白い肌に朱が差した。
「うん、行く。静くんあのね……嬉しい」
吐息が漏れる。
可愛すぎたのでくちびるを塞いだ。
「ん……こらっ」
そして旅行当日、つまり今日がやってくる。
は涼しい顔で飛行機に乗り込んだ。
繋いだ手のひらから俺のドキドキが伝わったらどうしよう。情けない男だと思われはしないだろうか。
考えながら座席に着き、小さな窓から外を眺める。
飛び立った!
どんどん景色が遠くなる。
おおー!
「静くん、やっぱり席変わってあげようか?」
「いい」
そりゃ景色は見たいけど、を窓側にして変な男に襲われたらどうするんだよ。それくらいなら自分で解決してしまいそうだけど……やっぱりダメだ!
クスクス笑う彼女の手を握り、額と額を合わせる。
「楽しみだな」
「うん!」
しかしその三十分後彼女は突然頭を抱えてうずくまる。人を呼ぼうとすると「大丈夫」蒼白の顔で手を掴んだ。
「本当に?」
「急に頭が痛くなってびっくりしたけど、もう平気」
「でもよ」
「じゃあなでなでして?きっと治るから」
「……する」
柔らかい髪に触れる。
気づくと肩に寄りかかり眠っていた。
時計台を見上げ、イチョウ並木を通り赤煉瓦。
観光ガイドに載っていたラーメン屋で舌鼓を打ち、ついで焼トウモロコシを食べた。
が一口ちょうだいと言うので差し出すと、ぱくり。
醤油をぺろり、「おいしい」
……興奮した。
さりげなくズボンの裾を直すフリをして色々直したら、小首を傾げて見つめる瞳と視線がかち合った。
先生、がエロいです。
前屈みで早足になった。
・
・
・
ひとしきりの観光も終わり、手を引かれるままに歩く。
何の変哲もない住宅街に疑問を投げかけた。
「何かあんのか?」
すると遠い目をした。
慌てて前言撤回をしようとすると、背伸びして人差し指でくちびるを押さえられた。
双眸が甘く、
「小学生の頃半年くらい住んでたの。……とはいえあっちの世界の北海道とこっちは違うのかな?」
後半の呟きは小さく。
幸せと哀しみが入り交じった表情を浮かべた。
抱きしめる。
「静くん!?」
狼狽する。
それすら可愛くて壊さない様に力を込めた。
首筋から甘い香りがする。
髪の毛が鼻先をくすぐった。
吐息が耳たぶにかかって、背筋に甘いしびれが走る。
力を緩めて、見つめ合って。
悲鳴が遮った。
「かたなし君!?」
「先輩にはまだ早い。見たらダメです」
振り向くとやけに小柄なウェイトレスと眼鏡のウェイターが買い物袋を下げ、騒いでいた。
心の声が口から飛び出す。
「なんで小学生がウェイトレスの格好してんだ?」
「静くんってばそんなこと言ったらだめでしょ?ごっこ遊びを否定するなんて酷いよ」
「そうなのか。わりぃなお嬢ちゃん」
頭を下げると憤慨した小学生。
「私高校生です!ウェイトレスもごっこじゃなくて本物で。ほらかたなし君も何か言って!」
「はい、先輩の可愛さは小学生です!」
「ちがーう!」
突然始まったコントに、「可愛い」が鈴の鳴る様な声で笑った。
胸が高鳴る。
「の方が可愛い」
「……年増」
図らずも重なった正反対の言葉。
うろんな表情で呟いたウェイターに歩み寄り、無言でデコピンをした。
空気の弾ける音がして、倒れた少年。
「何してるの!?」
怒られた。
凹む。
次いで少年に駆け寄った彼女。さすがに見知らぬ人間にデコピンをするのはまずかったか?でも俺のに年増って……殺されても文句は言えないな、むしろ積極的に殺す!
すると彼女は振り向き、
「めっ!」
俺の心臓を射抜いた。
めってなんだよめって可愛すぎるだろ。
その後なし崩しに男を運ぶ事になり、たどり着いたのは一軒のファミレス。
ワグナリア……?聞いたことないな。
しかし、
「こう見えても系列店なんだよ」
えっへんと胸を張ったウェイトレス、種島ぽぷらの頭を白魚の手が撫でた。
「偉いね」
「えへへ」
楽しげに笑い合う二人。
当初怯えていた少女は、道すがらですっかり彼女に懐いてしまった。
女同士だしそれだけが魅力的ってことだし……く、悔しくなんかないっ。
俺は悔しくなんてない!
肩に担いでいた小鳥遊の身体から、ミシリという音がしたので力を緩めた。そして店の裏口から入る。
ファミレスの店員専用の休憩室と思われる場所で、長身の女性が出迎えた。
「遅かったな」
無表情で横柄そうな雰囲気。
小さいウェイトレスに続いて部屋に入ると、
「かたなし君が気絶しちゃったんです」
「そいつ気絶なんてするのか?」
「あの、お邪魔します」
俺の背中から、が顔を出す。
瞬間、女性の視線が背後に集まる。
時間が止まった。
「?」
「……杏子」
かすれた声が聞こえた。
振り向くと、ぽかんと開いた口を手のひらで隠す。
「どうして……ここは元の世界なの?」
大きく開いた瞳が印象的だった。
ふたりはしばらく見つめあうと、どちらとともなく歩み寄った。
「杏子だよね。二十年ぶりくらい?あまり変わってないね」
「は少し変わったな……表情が柔らかい」
言って頭を撫でた。
長身の女とが並んでいると恋人同士のようだ。奥歯から軋む音がする。次いでお盆の落ちる音と共に帯刀のウェートレスが現れた。
「杏子さん!?」
「八千代。だ」
「こんにちは」
八千代と呼ばれた少女はエプロンを握りしめ、「そんな……杏子さんにまさかそんな」と呟く。混乱の極みに達しかけた瞬間、コック服の青年が現れた。
「おまえらさぼんなよ……客か?」
彼は周囲を見回し、めんどくさそうにため息を付いた。
「店長、その人誰だ?」
「なんだ佐藤か。小学校の同級生だ」
「「「同級生!?」」」
がひきつぎ、人当たり良い笑みを浮かべた。
「ごめんなさい、急だからびっくりして自己紹介が遅れました。昔半年ほどこっちの学校に通ってたことがあって。杏子とはその時仲良くしてもらってたの」
次いで女の側を離れ、俺にぴったりと寄り添う。
断じて鼻の下は伸びていない。
「私は。こちらは私の彼氏で平和島静雄さん。北海道には旅行で来たの」
さきほどまでのムカムカは瞬時にかき消え、幸せな気分で満タンになる。彼氏、そうだよなわかってるけど改めて言われると……。顔がにやけないするのに必死だった。
刀の柄に手をかけようとしていた八千代というウェイトレスも「彼氏」の一言で力を抜く。キッチンから出てきた長身の男はそれをみて息を付いた。
「立ち話もなんだし、座ったらどうっすか?……ところで小鳥遊はなんで寝てんだ」
「カタナシ君はデコピンで気を失っちゃったんだよ!」
「は?」
「ええ!?」
こちらに背を向け、小鳥遊を介抱していたショートカットの少女が驚きを堪えるように口に手を当てる。
「伊波ちゃんのパンチでも大丈夫なのに……」
「うわーん、小鳥遊君!!」
痛そうな音が床から響いた。
おいあれ床に頭打ちつけてねえか?
「えっと……そんなに揺さぶったら死んじゃうんじゃないかな」
「いつものことだから大丈夫だろ」
「……そうかな。杏子って相変わらず変わった友達が多いんだね」
「友達じゃなくて店員だ」
「もしかして杏子が店長さん?」
は目をぱちぱちと瞬かせ、杏子さんを見上げた。
「がんばってるんだね」
「まあな」
「あんたは食べてるだけだろ」
「食べ物……八千代、パフェ」
「はい、杏子さん!!」
佐藤はため息をつき、煙草に火をつけた。それを見て、「つもる話もあるだろ」との側を離れる。
そして並んで煙草を取り出した。
どちらも口を開かず、喧噪の空間に俺たちの周りだけぽっかりと穴があいた。
ふと疑問を口に出してみる。
「あんた、あの帯刀のねえちゃんに惚れてんのか?」
佐藤はむせた。
「大丈夫か?」
「あんたには関係ないだろ」
普段の俺だったらすぐにキレていたかもしれない。だが心境が理解できすぎる悩み、沸点には達しなかった。
「だいたい人前でいちゃいちゃするやつに……なんでもねーよ」
「あーこれから言うことは聞き流してくれ。俺たちつき合う前に一年くらい一緒に住んでてな……あれは生殺しだった」
惚けた表情でこちらを見る。
柄にもないことを言っちまったか?
「、俺ちょっと表歩いてくるわ」
「じゃあ私も!」
「久しぶりに会ったんだろ?」
「……うん。ならちょっとだけ」
そして振り返らずに歩きだした。
「なあ、本当に良かったのか」
「なにが?」
「もっとゆっくりしたかっただろ?」
宿泊先のホテルに着く。ダブルベットに座り、問いかけた。結局三十分ほど散歩をして、かかってきた電話でと合流した。二十年ぶりに会った友人との会話がそれで足りるはずもないことくらい俺にだってわかる。
しかし彼女は一枚の写真を眺めながら、
「大丈夫。会えてうれしかったけど、静くんのほうが大事だもん」
「……」
背中から抱きしめる。
ベットのスプリングで身体が跳ねた。しかしホックをはずそうした瞬間、目の前に一枚の写真が差し出された。
「もらっちゃった」
カメラ目線、気の強そうな少女とそっぽを向いたポニーテールの二人組。
「これか?」
「そう。あとから出てきた店員さんが持ってたの」
「なんでそいつがの写真持ってんだよ」
「杏子の写真に紛れてたみたい」
「はぁ?……ふん……なんか気にいらねえ」
「怒らないの」
ちょん、鼻の頭をつつかれた。
複雑そうな笑顔。
「この頃の写真ね、一枚も持ってないの。全部燃やしちゃったから」
「……そっか」
抱きしめると甘い花の香りがした。
「でもね、今見るとやっぱり懐かしいし、嬉しいよ」
「が嬉しいなら俺も嬉しい」
「私も静くんが嬉しいなら嬉しい」
見つめ合って、軽くくちづける。
行為を深めるために舌先を中へ。ベットが軋む音を立て、
「まだだめ」
肩を押し返された。
物足りなくて覗き込むと、
「そんな顔してもだめ」
腕の中妖しく微笑む。
「もうすぐご飯だし、お風呂もまだでしょ?」
「……けどよ」
「我が儘さん。じゃあご飯食べたら一緒にお風呂に入る?」
「入る」
即答して抱き上げたら、
「お姫様抱っこ……!?」
顔を赤らめた。
のこういうところ可愛くて好きだ。
*微エロ
「全部不思議。二度と会えないと思っていたのに」
広い湯船につかり手足を伸ばす。寄りかかる彼女の腹部に腕を回し、体勢を整えた。
は静かに語り出す。
「こっちの小学校に転校してから一週間くらい経った頃だったかな。杏子が道の真ん中で踞ってたの」
首筋から甘い匂いがしたような気がして、鼻先を埋めて嗅ぐ。
くすぐったがって笑う声に、舐めると汗の味がした。
「んっこら。最初は無視しようと思ったんだけど何故かできなくて。声かけたら第一声が、『腹へった』よ?色んな事がバカバカしくなっちゃって」
「それで?」
「パンあげたら懐かれちゃった。それで私がまた転校するまでずっと一緒に遊んでたの」
「……ずりい」
俺のなのに。
すると身体を反転させて柔らかいものが抱きついてきた。
「静くん可愛い」
「可愛くない」
「可愛いよ」
むうっと唸ると鼻先にくちづけられた。濡れた髪を撫でて顔のラインにそって、まぶた、頬、首筋。
「……っ」
「静くんのエッチ」
「ざけんなっ、この状態でっ」
言葉を遮る。
───ちゅっ。
音を立ててくちびるが合わさる。身体の中心に熱が灯った。逃げられないように後頭部を押さえて舌先を入れる。
次第に深くなるくちづけ。
立ちこめる湯気と身体を包み込む液体の感触。一度離すとの頬は扇情的に染まり、潤んだ瞳が攻撃した。
「のぼせちゃう」
「ちゃんと介抱してやるから……な?」
眉根を寄せて困った顔をして、
小さく頷いた。
彼女は今日もニコニコと愛想が良い。
旅行から帰り、ふたりで新羅のマンションにやってきた。
「セルティどうもありがとう。お土産届いてる?」
『良かったのか?あんなにたくさん』
セルティは冷蔵庫を指差し問いかける。
中にはカニ、ウニ、鮭、北海道の幸が満載されているのだろう。
「もちろん。良ければ一緒にお料理しない?」
『是非!』
すばやくPDAに打ち込み、嬉しそうに影を伸ばした。
『新羅喜べ!今日はごちそうだ』
「僕としては喜色満面のセルティが一番のごちそうだけどね……ぐふぅっ」
『恥ずかしいことを言うな!』
呆れてため息をつくと、傍らから聞こえた笑い声。
「仲良しさんね」
「あれって仲良しって言うのか?」
「いいじゃない、楽しそうで」
会話している間にあちらの騒動は終わり、セルティのPADがこちらに向く。
『さすがにこの人数では食べきれないんじゃないか?帝人君たちでも呼ぶか』
「鍋パーティーの次は海鮮パーティーかい?」
「賛成」
「いいんじゃねえか」
かくして四人の友人知人が大集合の、
カニ カニ ウニ サケ。鍋は海鮮、刺身は新鮮。味付けお好み、あなた次第。
のパーティが始まった。
騒然とした部屋の片隅で彼女の肩を抱く。遠くを見つめていた瞳が宙を彷徨い、照準を合わせた。
柔らかい髪にくちびるを埋め、囁く。
「北海道、また行こうな」
「一緒に行ってくれるの?」
「当たり前だろ」
「……ありがとう」
顔を見合わせて、微笑んだ。
また行こう。今度はの友達に会うために。