冷血Girl

環君と私


彼の場合、天然なのか養殖なのか本当にわかりずらい。

「それってホントに素なんですか?」
「……へ?」
「環先輩のことです」

すると蜜色の髪がやわらかく靡き、整った容姿がアホっぽく見開いた。

(うーん……?)

これは、真性のアホ?少なくとも作ってるわけじゃないな。というか聞いておいてなんだけど、もういいや。
だから口閉じて。
綺麗な顔がアホ面するのは私の精神衛生上良くないんだよ。

「やっぱいいです」

珍しく二人きりの第三音楽室。
私はソファーに腰をかけて、手動式ミルでコーヒー豆を挽いていた。ちなみにこれは先日ホスト部のお金で買ってきたコーヒーミルだ。
経費っていいよね、私の懐が痛まない所とか特に。この際だし、もう一個買って、パクってもいいよね?
モブで環君……じゃなかった先輩が何か言ってるけど、きこえなーい。
しかし黙って眺めていたら肯定的にとられちゃったのか独壇場?どこかからスポットライトが差し込み、一人芝居をする彼を明るく照らし出した。
だが私は気にせずコーヒー豆を挽き続ける。
……こんなもんかな?
さてホスト部オープンまであと三十分、

「よし」

お湯を沸かしに準備室に行こう。

「そうか、はそんなに俺のことを知りたいのか! では特別だぞ? あれは……遡ること十七年前、フランスの一角で天使のように可愛い俺が産声を……」

ごめん、興味ないんだ。
さくっと扉を閉めた瞬間環君の悲しげな、「ー! 無視しないでくれぇー!!」という叫びを聞いたような気もするけどやっぱり知ったことではなかった。







湯の沸く音が心地よく準備室に響いた。
カーテンの裏側から木漏れ日が差し込んで───今日もいい天気だなぁ。



以下反転であとがき
ヒロインはホスト部で裏方やっています。
トリップ前のカフェバイト経験を鏡夜にかわれた模様。