冷血Girl

裸祭りにご用心!


「海?」
「「イエース、海♡」」

シャープペンをカチカチしながらハルヒが問いかける。
双子は畳み掛けるように「フィジーだ、カリブだ」と言い、周りも大騒ぎ。

「それではいざ、海に行こう」

環先輩のコールに、私とハルヒ以外の全員が頷いた。

「いってらっしゃい」

にこにこ笑顔で手を振る。
次いで響くハルヒの悲鳴。

の裏切りものー!!」

やーね、そんな人でなしみたいな言い方。
単に自分の身を自分で守っただけじゃない───とは言え結局、「、参加するなら先日欲しいと言っていた、珈琲焙煎機の購入許可を出すが?」「ハルヒ、海楽しみね」魔王様の一言で方針転換を余儀なくされたのだけど。





と、いうことでやってきました海。
どうせ来るなら楽しまないと損よね。
黒のビキニを来て、日焼け止めを山ほど塗り、UVカット入りシャツを羽織った。

「まあさん、お肌がまっ白ですわ」
「本当! 羨ましいです」

出張ホスト部in海。
お客さんにお礼の言葉と、営業スマイルを送った。確かに肌は白い方かもしれない。でも焼くと痛いから善し悪しだなと思う。
しっかしプライベートビーチって日本にも存在していたのね。知らんかったわ。
そんなこんなで、本気で泳いだり、鳳先輩のSPさんにお願いして巨大パラソルを持って来てもらったり(紫外線はシミ、皺の元!!)ハルヒと一緒に潮干狩り(?)をしたりと普通に楽しんでいた。
だけど、どんな場所にも馬鹿っているもんだなと感じさせる事件発生。

「お? なんだビーチに出れんのかー」

大学生くらいの三人組。
彼らは缶ビール片手に調子に乗りつつ、歩み寄る。

「いーじゃん遊ぼうよ」
「こ、困ります。 ここはプライベートビーチで……」
「はいはい、そこまで。 お兄さんたちどこから来たの?」

お嬢さんの手を掴みかけた手をペシペし叩き、止めさせる。そしたら今度は私の腕を掴んで来たけれど、これくらいならまあ許容範囲内かな。

「ふーん、顔はまあまあだけどいい身体してんね。 俺らと一緒に遊ぼうよ」

おいおい。
ナンパ下手だな。

「はぁ? 誰が顔がまあまあとか言うやつと遊ぶかっての。 ここプライベートビーチだから、勝手に入って来ると怖いお兄さんにつまみ出されるよ」
「プライベートビーチ? なになに、もしかして君達お嬢様ってやつ?」

あー。
酔ってるな。
どうしたもんか。ここは適当に話をあせて……思った瞬間、

「離してくれませんか? 嫌がってるでしょう」

魚介類が飛んで来た。

「ハルヒ!? ちょっとあんたは下がって……」
「……んのガキ……」

げ、まずい。
なんでこの子はいつも直球で来るかな。

「……走って。 誰か呼んで来て」

隣りにいた少女に小声で指示を出した。

「なんだこの細っこい腕は。女みたいなツラしてるくせにかっこつけてんじゃねーよ」

二人がハルヒに掴み掛かる。
私はタコと戯れている(吸盤が外れないっぽい)男に話しかけた。

「ちょっとお兄さんの友達、傷害事件起こしそうになってるよ」
「いやだってタコが……」
「知るかボケ!!」

止めさせようと思ったのに、当てにならない!
焦って振り向くと、ハルヒが急峻な崖から海に向けて落ちていく。

「ハルヒー!!」

心配だ。でも環先輩が飛び込んだから……。
その後駄目大学生を半殺しにしようとする双子を止めたり、ハルヒの手当をしたりと大わらわに働いた。だが肝心の彼女は環先輩に言われたにもかかわらず、何に対して怒られているのかわかっていない様子だった。

「俺たちがそばにいんのに呼びもしないで、女の自分一人で男三人もどうにかできるってどうして思うわけ」
「男とか……女とか関係ないでしょう? あんなところに居合わせてそんなこと考える暇なんて……」
「ちょっとは考えろ馬鹿!!」

無理もない。
ハルヒはホント、危なっかし過ぎる。家庭環境上、そういう意識が薄いということはよく知っている。でもこれはそういう問題じゃない。
今回の件で理解してくれると良いけど。






そして夕飯の時間。ハニー先輩に諭されて、多少わかったようだ。
これで心配がひとつ減った!
だけどハルヒは、直後にやけ食いしたカニが祟って、どこかの部屋に駆け込んでしまった。
次いで遭遇。

「ということでハルヒが謝りに来ると思うので、適当に見つかりやすい場所にいてください」
「え……、ハルヒが!? でも日焼けが痛いから先に鏡夜にローション借りてきてもいい?」

百面相。
嬉しさがにじみ出過ぎ。
特に用事もなかったので、暇つぶしがてらついて歩く。
次いで鳳さんの部屋で、

「ナニしてんの?」

薄暗い上、乱れたベット。これ、片方がハルヒじゃなかったら事後だと思うところだ。
鳳先輩は日焼けローションを環先輩に押し付けると、彼を自分の室に押し込み、ドアを閉めた。
ま、これで仲直りはできるでしょ。
廊下を並んで歩きつつ、

「鳳サンってハルヒに気があるんですか?」
「どうしたらそんな理屈が出て来る」

「なんとなくー」と返答し、窓の外に視線を向けた。