冷血Girl

王女様と海賊

青い空に満開の桜がよく生える。
そんなある日、学園に王女様が来てホスト部が海賊になりました。
……イベント過多な学校よね、ホント。
桜蘭高校ホスト部は知っての通り、頻繁に変な仮装をするのが売りの一つだ。私は基本的に白いシャツに黒い前掛けのウェイタースタイル、和風時のみ女中さんルックに着替えていた。
基本的にホスト部の主役は彼らだし、清潔感さえあれば良いだろう。
と、思っていたのだが。

「……環せんぱーい」
なんか怖いよ、怒ってるのかにゃ?」

額に汗をびっしり掻く環先輩。
薄目を開き、色々な物を背負って威嚇した。
するとハルヒがひょいと覗き込む。

「どうしたの?」
「大丈夫よ、ちょっと環先輩にセクハラされただけだから」
「……軽蔑します」
「違うんだハルヒ−!!」

コントを眺めながら、手の中の布きれに視線を落とす。
今日のホスト部のテーマは「海賊」だ。それは構わないというかどうでもいい。だけどどうして私の格好がズボンとビキニトップス(布地)の臍だしルックなの!?喧嘩売ってんのかこの野郎。
薄着すぎるのもほどがあるわ、大人を舐めんなよ。いくら身体が十代だからってできることとできないことがあるわボケ。
ということで与えられた衣装をぽーいと捨て、普段通りの格好に着替えた。
営業は、双子が調子乗ったとか音楽室に謎のうさちゃん島ができたとか、環くんたちがシロップ漬けのさくらんぼの種を植えてハルヒに白い目で見られたりといつも通りに頭おかしかった。しかし本当の問題は中盤以降に訪れる。
お姫様が現れた。
モナール王国第一王女、ミシェル姫。
留学生だそうだ。
めんどくさいことになりそうな雰囲気を感じて、一歩下がる。手早く制服に着替え直し、音楽室を抜け出した。
モナール王国は確かヨーロッパの小国だったはず。数年前、先代国王王妃が急逝したというニュースを見た覚えがあった。
確か二十代の皇太子が即位したはず。
思案しながら廊下を歩く。
1−Aの前まで歩いたところで手を叩いた。

「よし、傍観しよう」

決断すれば早い。
翌日から「モブ的クラスメイト」の仮面生活が始まった。

ってば」

しかしクラスが王女で盛り上がるのを横目に、何故か行きすぎた兄妹愛を否定する双子、あきれ顔のハルヒが机の斜め前にいた。
……どこか行ってくれないかな。
教科書を読むフリをして、無視した。
だが鏡夜先輩まで混ざったことにより、回避が難しくなる。

「小国とはいえ歴とした王族だ。とりいっておくに越したことはない」

意味ありげな視線を寄越したので、教科書でガードした。
この人最近妙に馴れ馴れしいというか、距離を詰めてくるな。私に気でもあるのか?
環先輩の大げさな王女プッシュを眺めながら、あくびをした。

結果はいつも通り、ホスト部らしいバカバカしさと少しの優しさでもって解決した。
王様が好みのイケメンだったので、もう少し関わっておけば良かったかなと思ったのは秘密。