冷血Girl

カラオケボックスにて

「10番須王環、私鉄沿線歌います!!」

リストをパラパラ捲りつつ、遠い気持ちで熱唱を眺めていた。
周囲はいつも通り、騒がしいホスト部面々。しかし今日の舞台は音楽室ではなく普通のカラオケルームだった。

「ねえ……あんた、さんだったよね。あのハーフみたいな人なんで古い歌ばっか歌ってんの……?」
でいいよ。あれは……なんでだろうね……」

ウーロン茶を飲みつつ答える。
今話しかけてきた、ガン黒コギャルの彼女はメイちゃん。軽井沢でお世話になった美鈴さんのお嬢さんだそうだ。ちなみに家出中の上、ハルヒの家で居候をしている。
そのハルヒといえば、やけに環先輩を避けている節がある……何かあったのだろうか?
とはいえ私が気にしても仕方ない。お手洗いから戻ってきたハルヒと、唐突に恋に落ちたっぽいメイちゃんを残し、席を立った。
お手洗いの後、自販機でジュースを買い椅子に腰掛ける。
ふぅとため息をつき、時間を潰していると声が降り注いだ。

「何をしてるんだ?」
「座ってジュースを飲んでます」

鏡夜先輩に向けて顔を上げ、足を組み直す。すると彼は断りもなく隣に座った。
そしてため息をつく。

はハルヒに負けず劣らず協調性がないな」
「そうですか?」
「自覚がないのか?」
「ありますよ。でも全体としてプラマイゼロに持っていける自信があります。あと、協調性云々を言うなら部員全員になにがしかの問題があると思いますよ」

やや上目づかいでにっこり微笑む。
鏡夜先輩は後ずさり、眼鏡を持ち上げた。

「質が悪いな」
「自覚はあります」
「……俺はどうして」
「はい?」

口の中でもごもごとしゃべったのでよく聞こえなかった。しかし聞き返しても、答えてくれない。
そこまでして聞き出す内容だとも感じなかったので、スルーしたが良くなかったかもしれない。何故ならこれはフラグだったのだから。



メイちゃんの家出問題は色々あって解決し、ついでにハルヒの可愛い可愛い浴衣姿が見れた。メイちゃんに頼まれてクラブイベントのショーモデルまで経験した、面白みのある夏休みだった。
鏡夜先輩には睨まれたが。