台無し美少女騒動記

  1. 日常のひとこま細切れ
  2. 最もな彼の心情
  3. 側近は語る
  4. 主人公、出会う

復活雲雀恭弥夢?
常にフルボッコにされます。ヒロインは変態でよくハアハアしてます。残念な美人を書くつもりが気づいたら頭が残念な人になっていました。
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2010.12.29

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日常の一コマ細切れ

彼女はかつて孤独だった。
すらりとした長身。煌めく黒髪は肩口をさらりと流れ、切れ長の瞳は出会う全てを魅了した。
故に彼女は独りだった。
しかし出会いが彼女を一変させる。
彼、雲雀恭弥との出会い。清純可憐と噂された彼女が「残念」という形容が付くまでに壊れ、幸せを手に入れた出来事。
その結果が早朝の校門にあった。
黒髪がバサリと揺れ、学ランの少年を見つけた途端加速する。

「雲雀さんおはようございます!愛してます!今日も素敵なお尻ですね!触らせてくださ、ぐぼあぁああーー!!」
「君、どうしたら死ぬの?」
はキュン死にですぅ」

頭部から血をダクダク流しながら至福の表情を浮かべる少女と、黒光りするトンファーで一撃した少年。
普通であれば通報の一つや二つされておかしくない状況だった。
だが周囲はすでに慣れきっている。

「「また雲雀とか」」

二人を遠巻きに、噂だけがただ広がっていく。
これは最強にして最恐の風紀員長雲雀恭弥と風紀委員の紅一点にして並盛中学一残念な美人のお話。

最もな彼の心情

「ああー!並盛中ぅ!平々凡々ぼーんぼん」

変な節をつけた校歌の熱唱が響く応接室。
彼は書類を片づけながら、冷たい声音で言った。

「うるさい。下手なくせに歌わないでくれる?」

対する可憐は嫌みを欠片も気にかけず振り向く。
瞬間長いまつげが瞳に陰影をつくり、魅惑的な表情を作り出した。しかしそれも一瞬のことで普段通りの締まりのない笑顔に戻る。

「お片づけーるるん」

決済済みの書類を持ち上げる。
恭弥は彼女に見とれていたことに気づいた。
だが、

「憂い帯びたひばりんの表情ゲット!」

スカートが捲れるのもかまわず(スパッツを履いているが)床に膝を立て懐からカメラを取り出した

「……校内へのカメラの持ち込みは校則で禁止されてる。取り締まる側の風紀員が破っていいと思ってるの?」
「ち、違います。これはカメラじゃなくて雲雀さん専用映写機です!!」

意味不明な言い訳を始めたを一撃で沈めた。

「はぅん、これが愛の痛み……」
「違うよ」

いくら顔が好みでも、こんな変態好きになってたまるか。
恭弥は心の中で呟いた。

側近は語る

「ひばりんの愛が痛い」
「……大丈夫ですか?」

応接室で、男女が向かい合って座る。
細身の少女と大柄の少年。一件共通点の存在しない二人は、風紀員と雲雀恭弥という強いつながりを持っていた。

「これが愛なのね!そうでしょ草壁くん!!」
「それはなんとも……」

力むとまた出血しますよ。
案の定頭部を押さえているタオルに血が滲んだ。しかしあと数分もすれば綺麗さっぱり治ってしまうだろう。そうでなければ毎日のように彼に殴られて無事でいられるはずがない。
頑丈すぎる少女をなんとも言えない気持ちで眺めた。

「草壁くん」

切れ長の瞳でまっすぐ見つめる。
常人の数十倍整った顔で凝視されればどうしたって落ち着かない気持ちになった。
けれど彼女が口を開けば開いただけトキメキは消えていく。

「草壁くんと私、二人合わせてひばりんラブ☆親衛隊とかどうだろう」

ネジが二三本外れてる。
雲雀恭弥にさえ関わらなければ優秀な人であるのは、右端に寄せられた決済済み書類の山からも見て取れる。

「えー……そうですね」

どうやって煙に巻こうか。 考えていると、

「ワオ、サボりかい?」

ガラリ、応接室の扉が開く音がして彼が不機嫌そうな顔で登場した。
途端に輝き出す彼女の瞳。

「雲雀さぁーん!!」
「邪魔」

飛びつこうとしたのを手のひらで一撃して追い払う。だがという人がそれくらいではめげるはずもない。

「雲雀さんのおみ足、ハァハァ」

姿勢が低くなったのをいいことに変態じみた発言を繰り返しながら、右太股に縋った。

「……咬み殺すよ」

頭部を鷲掴みにしてグリグリと攻める。

「ひぅん、いやですぅー太股ぉ!!」

以前生死の境を彷徨った事を配慮してか委員長なりにトンファーで殴るのは一日一回まで、と決めているようで。
この体勢になると長い。
しかし委員長は委員長で彼女がいるのを知って来るのだから……。

「草壁、このバカに仕事させて」
「終わりましたぁ」
「じゃあ僕の分よろしく」

ぽいっと投げ捨てて、応接室を後にした。

「雲雀さん、もっとかまってください!!」

頬染めて恍惚の表情を浮かべた彼女を置き去りに。
これが不可思議で表現しがたい二人の関係の一端だ。

主人公、出会う

彼女と出会ったのは、入学して間もない時期。
校舎裏で不良に絡まれてたオレを助けてくれた。
その頃オレは周囲からダメツナとバカにされていて、友達もいなくて、中学一年にしてお先真っ暗な人生を突っ走っていた。

「ダメツナ君よぉー、先輩達にちょっとお金貸してくれよ」
「ひぃーお金なんて持ってません」

絶体絶命のピンチに、本気で学校が嫌いになりかけていた。勉強もダメ、スポーツもダメ。その上カツアゲまでされて。
その時だ、凛とした声が校舎裏に響いた。

「やめなさい!」
「なんだぁ!?」
「おい、風紀委員の」

見上げると女神様がいた。
大げさに聞こえるかもしれないけれど、その時のオレにはそんな風に映った。長い黒髪を靡かせて、細い腕には風紀委員の腕章。
思わずポカン、と見つめた。

「ビビらせんなよ。雲雀はいねぇのか?ああん?」
「委員長に何かご用?いいからカツアゲを止めて反省文を提出しなさい」
「聞いたか?」

不良どもはケタケタと笑う。
次いで彼女の腕を掴んだ。

「一人で何が出来るっていうんだよ。それより俺たちといいことしようぜ」
「離しなさい」

もみ合いになる。
それをただ眺めていた。
勇気を出さなきゃと思った。でもダメだった。
……やっぱり俺はダメツナだと思い知った。
だけど助けは現れる。

「僕の前で群れるな」
「げ!?」
「雲雀さん!」

学ランに風紀委員の腕章。
黒い影は一瞬にして不良たちに近づいたかと思うと、トンファーを取り出し叩きのめした。
見て、彼女の表情が綻んだ。

「雲雀さん、来てくれるって信じてました」

勢いよく立ち上がり、飛びつく。
彼はそれを抱き止めた。
まるで漫画のヒーローとヒロインみたいに───思ったのは幻覚だったけど。

「雲雀さんのお尻ハアハア」
「いい加減にしないと君も一緒に咬み殺す」

何故か彼女は抱きつく寸前クルリと回り、臀部に抱きついた。対する彼は不良達の返り血がついたトンファーでグリグリと彼女の頭を叩く。

「弾力最高です」
「殴るよ?」

結局彼女は不良もろとも血の海に沈んだ。
それは俺の芽生えかけた恋心と共に。
数日後、彼女の名前と通称を知ることになる。
「残念美人」そして繋がりは途絶え───後に邂逅する。