ふたつの世界、ふたりの世界

バカップルへ30題

お題はバカップルですが、静雄がツンです。リッパーナイト以前のお話。
確かに恋だったよりお借りしました。

初詣で / 入試前夜 / 春休み / 聖夜 / 子供時代

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2010.07.25




*   *   *



初詣で

「しーずくん! 初詣に行こう、ね、初詣ー!!」
「……あ?」

気乗りしない顔を覗き込む。
ソファーに深く腰掛け、ふぅーと吐き出された紫煙。
大きく開いた膝の間に身体を滑り込ませ、右膝を手で揺すった。

「ね、ね、ねぇってば!」
「うるせぇ」

ぴしゃりと言い切られた言葉にむぅーと睨む。
するとぼそぼそと語られた理由。

「人ごみ、苦手なんだ……お前の前でキレたくねーし」

降り注いだ自嘲気味の言葉にしばし思案する。
そして、

「待っててね」

言って自室に駆け込んだ。
しかして小一時間後、

「じゃじゃーん!」
「……なんだそれ?」

削られた割り箸に不思議そうな表情をした静くん。
私はにっこり笑い、「おみくじ!」と答えた。

「さあさ、引いてくださいな」
「……おう」

複雑そうな表情で引いた棒は大吉。

「大吉です!」
「……さんきゅ」

照れて微笑む。
それがあまりに可愛かったので、「大吉特典!」と叫んで頬にくちづけた。






*   *   *





入試前夜

「受験勉強」
「あ?」
「世間は今そういう時期じゃない?」
「ふーん」
「静くんは高校入るときどうだったのかなって」
「……来神はそんなにレベル高くなかったからな」
「でも、がんばったんでしょ?」
「……それなりに」

なんでもないこと、と主張するように目を反らす。
小さく笑って、頭を撫でた。

「静くん、良い子!」
「ばっ……やめろよ」
「良い子良い子」






*   *   *





春休み

「春休みって、中途半端だよね」
「そうか?」
「大学でも行ってれば違ったのかもしれないけど、バイトしてた記憶しかないなぁ……卒業旅行もしなかったし」
「友達とか、いなかったのか?」
「……うーん、学生時代は色々あったからね」
「そうか」

ほっとしたような、悲しいような複雑な表情を眺めて、肩に寄りかかった。

「今は静くんがいるから楽しいよ」

こてっと胸元に寄りかかると、上気した頬が見えた。






*   *   *





聖夜

キラキラ輝くイルミネーション。
吐く息は白い。
思わず吐息が漏れた。

「わぁ……」

繋いだ手をぎゅっと握りしめて眺める。

「綺麗だね」
「……ん」

頷く気配。
嬉しくなって見上げた。
合う視線。
見つめ合う。

「静くん」
「なんだ?」
「好き」

ゲホゲホと咽せる音が聖夜、響き渡った。






*   *   *





子ども時代

「初恋はパン屋のお姉さんなんでしょ」
「ゲホゲホゲホ」

漫画のように咽せた彼。
背中を摩り、でも追求はやめない。
耳元にくちびるをよせ、ソファーに腰掛ける静くんを抱きしめた。

「でしょ?」
「……昔の話だろ」
「綺麗な人だった?」
「……ん? ちょっと待て、よく考えたらなんでお前がそんなこと知ってるんだよ」
「なんででも!」

身を乗り出して、顔を覗き込む。
するとバツの悪そうな表情になった。
体勢を戻して、肩に顎を置く。

「初恋は叶わないのものだから、みんなそうよ」
「……俺の場合……」
「同じなのっ」

強く言い切ると驚いた顔でこちらを見た。
口角が上がる。

「すきあり」

ちゅっ。
音を立ててくちびるが合わさる。

「な!?」

そんな近づく方が悪いんですー、言ってもう一度くちづけた。




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