未来編のお題バージョンです。お題配布元⇒TOY
ご感想等お気軽にいただけると嬉しいです→ウェブ拍手
2011.03.28
俺の奥さんが頬を膨らましている。
「和花ちゃんはお父さん似ですね」
言われたのが気にくわなかったらしい。
その場では笑顔で頷いていたが内心、
「私が生んだのに!」
くちびるを尖らせていた。
「お袋はいつもお前に似てるって言ってるだろ。な?」
「お義母さんは優しいから!!」
今度は拳を作って、パタパタしてる。
……可愛い。
っと、今はそんな場合じゃなかった。
「圭はパパとママって言うより幽くんだし」
「ここまで幽に似るとは思わなかったよな」
「平和島家の遺伝子が強すぎるんじゃないの!」
「……って言われてもな。だいたい茉莉も平和島だろ」
「そうだけど」
むーむー言いながら俺の膝に乗っかり頬を抓る。
ソファーがきしんだ音を立てた。
腰に手を回すフリをしてお尻を撫でたら、「スケベ」言葉と同時に頬にくちびるの柔らかい感触。
身体の中心で反応するモノがあった。
父親と言ったってまだ三十代だし、茉莉はいつまで経っても可愛いし。昆虫採集って言ってたからあいつらもしばらく帰ってこないだろうし。
言い訳を重ねて、妻の耳元に息を吹きかけた。
「茉莉」
「パパ、くすぐったい。……っんもう……静くん」
甘い声音が答えた。
腰に回した腕でうちのにゃんこを持ち上げる。静に体勢を入れ替えてソファーに押し倒した。
くちびるが触れあう。思った瞬間、
「「ただいまー!」」
和花と圭の声が玄関から聞こえた。
「……っ!おかえりなさい」
茉莉は素早く身だしなみを整えると、唖然としている俺を置いて玄関に向けて小走りで去った。
ぽつり、呟く。
「……俺は、どうすれば……」
期待に満ちてしまった身体は終了の合図を聞かず、活気づくのをやめない。
……せめて胸くらい揉みたかった。
玄関から息子と娘が元気に虫取りの成果を報告する声を聞きながらため息をついた。
「圭、圭、けぃー!」
「和花うるさい!」
「うるさくないもん!」
二段ベッドの上の段からにょっと黒髪、次いで見慣れた妹の顔が現れた。
「うるさい」「うるさくない」「うるさい」ぎゃーすかいってる内に徐々に赤くなる和花の顔。
呆れてため息をついた。
「その体勢苦しくない?」
「苦しい!」
「じゃあ降りてくれば?」
「はーい」
軽い音がして、飛び降りる妹。
相変わらず尋常じゃない運動神経の良さだ。
「ちゃんと階段使わないとママに怒られるぞ」
「ママだってこの前屋根から飛び降りてたよ」
「その後パパに怒られてただろ」
和花はみゅーみゅーうなったあと、「はーい」と頷いた。
「で、何?」
「あのね。パパとママのご近所の評判ってどんな感じ?」
「ご近所?」
こいつはまた、変なことにばかり興味を持つ。
ドラマでも見たのか、友達の影響か。
適当に答えた。
「万年新婚さん」
「まんねんしんこんさん?」
「パパとママは仲良しだろ」
「すっごく!」
どんぐり眼が近づく。
少し考えてから言った。
「だから、万年夫婦は仲良しって意味だよ」
「ふーん」
わかってなさそうな顔で首を傾げ、そのまま転けた。
頭を打って涙目。
うちの妹はちょっとバカだ。
でも手を貸してやったら、「ありがとう!」にっこり笑った。