お気楽道中、問答無用!

「姫様もそろそろお輿入れのお年頃になりましたね。 先日の見合いのお相手はいかがでしたか?」

しゃらしゃらと耳障り良い布づれの音がした。
中華風かつゴージャスな室内で目前の女は微笑む。姫様、つまり私のお世話係を任されてしまったかわいそーなおばさん。まあ給金は破格だから文句はないだろう。

「うっせーだまれボケ」
「姫様!!」

耳に指を突っ込みながら寝台に足を投げ出した。
誰が嫁に行くか。
貴族の姫君の宿命?
はっ、知るか。
別に生まれたくてこの家に生まれたわけじゃない。
というか、異世界トリップ?っていうの、それやっちゃったみたい。しかも前世だか元の世界だか、その場所にいたのは確実なのに、よく覚えていない。一般常識、高校卒業程度の知識はあるのに、自分がどこの誰だったのかさっぱり。
何なのかね、一体。
私、神様とか信じてないし、奇跡なんてあるわけない。勘弁してって感じ。
お世話係の悲鳴のような愚痴を無視して、胡座をかく───かこうとしたら。

!!」
「うぜーのキター」

ぼそりと呟く。
ぱーんと扉を開いて、後光を背負いながら登場したのは幼なじみ兼、従兄弟兼、腐れ縁の星倫(せいりん)。
私とお揃いの少し癖がある艶やか黒髪イケメンだ。
でもナルシストで泣き虫。
家の者には私たちの性別が逆だったら良かったのに、と影でこそこそ言われている。端女どもがうざいうざい。傍流に生まれた事に悲観して、爪かんで生きてろボケ。
星倫はお世話係に優しく微笑んだ。

「君は下がっていてもらえるかな」

彼女はちょっとぽっとした後、あからさまにほっとした表情で、室を出て行った。
別にいいけど、年頃の男女を二人っきりにしていいのか?なんかあっても知らんぞ。ありえないけど。

、君お見合い相手の股間を蹴り飛ばして逃げて来たって本当かい?」
「ふ……つまらぬ物を蹴ってしまった」
「またわけのわからないことを言ってごまかして!!」

そして口喧嘩。
最後はいつものごとく庭に出て、剣で決着をつけた(訓練用の刃を削ったやつだ)
結果は当然。




「……ぐす……ひどい……」
「はっ」

そして涙目でみぞおちを押さえる男を見下ろした。
弱いわー、めっちゃ弱いわー。
なーんてね。
実は星倫は強い。
羽林軍に実力で入れる程度なんじゃないかな。
つまり私が強すぎるのだ。
この世界に生まれた日からずっとそうだった。
本を読めば一回で頭に入るし、ちょっと素振りをしていたらいつの間にか強くなっていた。つい先日破落戸をぶっとばしたばかりだ。
天才ってやつ?
オホホホ、気持ちいいー!!
お父様が言うには、藍家にも似たようなのがいるらしい。
天つ才って呼ぶんだって。
なにその『つ』意味解んない。
ただ藍龍蓮には興味がある。
会ってみたいなー。よし、決めた。

「星倫、行くわよ」
「どこに?」

ということで冒険は始まった。