お気楽道中、問答無用!

僕には生まれた時からずっと一緒の従姉妹がいる。

彼女が本家、僕は傍流。
少し癖のある艶やかな黒髪を持つ美少女だ。
でも良いのは見た目だけ、僕と似てるのなんて髪くらいだろう。性格が悪い、口が悪い、鬼みたいに強い。底意地が悪い。
彼女は幼い頃から可愛くて、その美は成長するごとに芸術と言って差し支えないほど磨かれていた。だが僕にはあれを恋愛対象として見る勇気はない。
子供の頃からに想いを告げては、撃沈していく少年達(しかも毎回心に癒えない傷を負わされる)を見続けていは惚れろ、というのが無理な話だろう。
しかし非常に質の悪い事に、

「いいざまね」

打たれ、庭で這いつくばる僕を見下ろす視線。
始めは悔しくて堪らなかった、僕を強くしたそれが、













気持ちよくなってしまった。
いつからだろう、僕は変態なのだろうか。
こんな悩み誰にも言えない。
折角美形に生まれて来たのに、女の子が寄り付かなくなってしまうではないか。自分で言うのもなんだが、僕はモテる。すぐフラれるけど……その度にに傷に塩を擦り込まれるけど……。

そんなある日、彼女が突然室に飛び込んで来た。
床につくほど長かった髪を半分に切って。小さな旅の荷物を背負って。

「星倫、行くわよ」

いや僕、今年国試受ける予定なんですけど。
でも当主様(の父)に頭を下げられてはどうしようもない。彼女は当家の天つ才。いわば宝玉。絶対に壊すわけにはいかないし、破天荒な言動を止めることは誰にもできない。
止めたところで今度は一人で勝手に出て行くだけだろう。
だったら二人で行く方が何倍もましだ。

「遅い、この愚図!」
「うんごめん」

だけどこの関係をどこかで楽しい、と感じている僕はもうまともな道には戻れないのかもしれない。