みすぼらしい格好をした少女が泣いていた。
ピーピーぎゃーぎゃーうるさい。
その上何を勘違いしたのか、
「助けて」
私に助けを求めて来た。
みずぼらしい格好の少女、捕まえる人相の悪い男。
人買いと売られた子供。
だとしたら私がすべき行動は一つだった。
「!!」
シカト。
すると星倫が横から文句をたれる。
えーだってさ、売られたなら売られたなりの理由があるわけよ。ここで助けたところで、根本的問題を解決しなくては何の意味もないし、それって偽善だと思う。
「めんどくさいって顔に書いてあるよ」
あーうるさい。
仕方ないな、お前責任とれよ。
「やっておしまい」
しかして人買いを適度にボコってから少女の代金分を押しつけ、物語的なものが始まる。
「ふぅん、典型的なボロ家ね」
すきま風が吹きすさぶあばら屋。
それが助けてやった少女の生家だった。てっきり連れて帰った所で、「もうお前の住む家はないんだよ」的なことを言われるかと思ったら、あっさり迎え入れられた。
泣く泣く娘を売ったものの、心情的には手放したくなかったといったところだろうか。
まああれだな。
半年後にまた売られるパターンだな。
「そんなこと言うもんじゃないよ」
しょぼーんとした空気と、ひそひそ声で忠告する星倫。
だがそれが事実だ。
貧しいっていうのはそういうこと。
娘を売って一家全員が生き延びるか、全員で飢え死にするか。
「……酷い……」
小さな肩をすぼめて泣く少女。それは濡れた花のようにいじましい。
と、男の目には映るんだろう。
はっきり言ってこういう女は嫌いだ。自分に幸福が訪れるのをただ黙って待っている。来なければ神様のせい、他人のせい、生まれのせい。
一度面倒見た手前最後まで付き合おうかと思ったけど、やっぱり止めようかな。
すると、
「……」
犬だ。
うちの飼い犬が見つめてる。
あーあ。
あーめんどくさい。
「星倫、行くわよ。 ねぇあんた、そうこの泣きべそ娘の兄のあんたよ。 そこの役立たずの代わりにしっかり働きなさい」
立ち上がった。
瞬間、娘が星倫の袖を引いたので蹴飛ばしてやった。