不意に甦った、君の一番の願い事

「で、秀麗ちゃんはどうするつもりなの?」


 主上対策を、と付け加える。
 

「……その前に。 なんでここにがいるのよー!?」


 あはっ、怒った顔もかわいいわ。
 二人きりになった室で、秀麗はこぶしをふるふると震わせた。








「と、いうことで主上付き女官をやってるの」


 語尾にハートマークをつけんばかりの勢いでわたしは言った。すると秀麗は怒ったように顔を赤く染め、しかし力が抜けたのか、馬鹿馬鹿しくなったのか、へにゃへやと椅子に座り込む。


らしいと言えばらしいけど」
「そうかな? 秀麗の貴妃姿も麗しいわよ」


 にこにこと笑いながら近づき、顎に手をかける。すると顔がぽっと顔が赤らんだ。
 その仕草に思わず、静蘭にもこれくらいのかわいらしさがあればいいのに!とひとりごちる。
(――気持ち悪いので却下)


 秀麗は咳払いを一つすると、


「つまり協力してくれるってことよね?」
「んーまあぼちぼち」
「ぼちぼち!?」


 と叫ぶ。
 わたしは笑いながらしゃべり始めた。













□□□








「主上、今日は宋太傅と稽古じゃないんですか?」
「うむ、最近はなにやら忙しいらしいぞ。 は一緒に行かないのか?」
「ん〜ちょっと急がしくって。 一刻程で片付くと思いますけど」
「では、後で邵可と三人でお茶を飲もう!」


 きらきらの笑顔に心癒された。


「用事が済んだらね?」


 子犬だったらしっぽ千切れてるだろうなーと思わせる、満面の笑顔な主上と指切りをする。「嘘ついたら針千本のーます。 指切った!」
 少々浮かれ気味の後ろ姿に、将来が不安になった。秀麗に任せておけば大丈夫……だと思うけど。
 大丈夫……だよね?うーん。

 庭院では花菖蒲が見ごろを迎えていた。