独白

 暗い。


 まるで闇夜の中を歩き続けているみたいだ。


 彩雲国。作り物の世界。作られた人々。
 その認識は香鈴や鴛洵さま、主上と過ごすやさしい時間の中で少しずつ変わり、


「――


 暗く光を放つ紫闇の瞳で鮮烈に焼き付け、くちびるの甘美に震えたけれど。








 帰りたい。
 わたしはその気持ちを諦めきれずにいる。
 どんなに愛しても、ここはわたしの世界ではなかったから。


『私の……冬姫……』


 囁き、この世界へ攫った縹璃桜。
 少しずつ彼を恨みに思う気持ちは薄れて来たけど、でも元凶に変わりはない。
 この葛藤も何もかも、彼に押し付けて忘れられたらいいのに。
 彼を殺して、この世界から消えてしまいたいと、時折嬲るような風が囁き、闇が心に瞬く。
 だけどそれは嫌だ。
 血で汚れた腕で家族を抱きしめることなど出来ないから。
 だからそれだけの為にわたしはより困難な道を選ぶ。
 すなわち、彼自身に元の世界に返してもらうということ。
 それは可能だと思った。璃桜は狂人ではない。そしてわたしは彼の『冬姫』ではないから。
 しかしこちらから出向くのは駄目だ。リスクが大きすぎる。
 だからわたしは、原作の流れを壊さず生きることにした。
 剣を振るい、暗器を磨き上げ、矛盾に満ちながら最善を求める。


 ――けれど。
 本当にこれで良かったのだろうか。
 何か間違っているのではないか。


 だけどわたしはそれの大切さに失ってから気づくのだ。
 そして、



















 紅貴妃誘拐事件が起きる。