だから、これが罰なのだ。
「いやあああああああ!!!」
髪を掻きむしり、腕に爪を立てた。
目前が真っ暗になる。
楸瑛の腕が肩にかかり、わたしの正気を取り戻させようと揺さぶった。
「殿しっかりしてください!」
しかし何も見えない、言葉は聞こえるけれど意味が理解できない。
結局わたしがいる意味などなかった。静蘭のところへ駆けつけたとき事態は既に終わっていて、傷ついた彼と黒狼が出迎えた。そして邵可さまの言葉に慌てて向かった場所で見たのはもの言わぬ鴛洵様の亡がらと見覚えのない青年。
「こいつを止められたのはお前だけだった」
その言葉で彼が霄大師だと気がついた。
「お前は鴛洵を見殺しにした」
吐き捨てる様に呟かれた言葉に思考が停止する。
しかし同時に心のどこかで彼の言葉の正当性を認めていた。
わたしは鴛洵様が今この時死ぬと何年も前から知っていた。なのに一度も止めなかった。
(自分の為に)
元の世界に帰る方法を模索するには原作の不変が肝要だった。だから死ぬと分かっていたのに止めなかった。
冷たい風が吹く。朝日が昇り周囲が白々と明け始めた。しかしわたしは身動き一つ取れず、呆然と佇む。
ツケが回って来たのだ。鴛洵様の優しさに甘え、考えない様にしてきた大切なこと。ずっと逃げ続けたから罰が当たったのだと思った。
自責の念にへたり込み、鴛洵様の亡がらに縋り付き涙を流した。
しかし打ちひしがれたわたしを待っていたのは、『香鈴の自殺未遂』この子だけは守れたと思っていた。なのにみすみす死の危険に晒した。
全てを理解したとき、自分への激しい失望に叫び声を上げた。