いつか革命する世界で

それはまさにピンポンダッシュ的な

「ふんふんふーん♪ ふんふんふーん♪ ふんふんふんふんふんふんふーん♪」

軽快に鼻歌を口ずさみ、地面を蹴る。
景色が背後へと流れた。
早朝のランニングは気持ちが良い。
東館前を出て、学園に続く道を駆け上がる。
途中、今日は白亜だったフェンシング上を横目に、驚いて固まっている千種さんも横目に通り過ぎた。

「待ちなよ」

通り過ぎた。

!!」
「はいはーい、ちゃん☆ですよ」

後ろ歩きのまま駆け戻り、額の前でVサインを決めた。
千種さんは朝日をさんさんと浴びながら顔を引きつらせ、「おはよう」と呟く。

「おっはー!」
「……君、いくつなの?」
「いやーん、レディーに年齢を聞くなんて失礼よっ」
「はぁ」

ため息をつき、しかし気を取りなおし引き締まった表情で顔をあげた。

「それで君は一体何をしているんだい?」
「朝のランニング、略して朝ランよ!」
「どうして朝からそこまで元気なの……」

本気で肩を落としてしまったので、ポンポンっと叩いて慰めると、「君のせいなんだけど」睨まれた。
きゃー美人さんって怖い顔すると超怖いんですけど!

「それはそうと」

話を逸らしがてら仁王立ちで、白亜の建物を見上げた。

「今日は廃墟じゃないのね」
「……」

気温が下がった。

「……何のことかな」
「だってここ十五年前に火事で全焼したんでしょ。学園新聞に載ってたよ」
「……へえ、もしもここが廃墟だとして……ならば目前にある建物をどう説明するつもり?」

その問いかけにグワシ! と千種さんを振り向き吃驚してる顔に向けて叫んだ。

「引○天功の仕業に違いないわ!!」
「…………は?」
「イリュージョンだっていうのはバレてるのよ! さあ出てきなさい!!」

両手を広げて待った。
ゴミが風に舞う。
引田○功は現れなかった。

「じゃ、そういうわけで」

シュタっと挨拶して、走り出す。
緑の匂いを身体全体で吸い込み、微笑んだ。
十キロほど走ったら東館へ戻るとしよう。

───それにしても千種さんは早朝から何故あんな場所にいたのかねえ。