「“命をかけられるほどの女”ってのを、まだ探しているのか?」
「心当たりはなくもない」
金髪の男、その問いかけに揚羽は薄く笑んだ。
「……なるほど、しっかりがんばれ色男」
運命の女
革命から数日。
夜空に星が流れた。
「───流れ星か、吉凶両方の意味があるな……」
雷蔵は妻の肩を抱き、不安気に空を見上げた。
揚羽は一人軽い口調で、
「お、流れ星だ。誰か死ぬのかな」
「趣味が悪いわ」
女の声が遮る。
振り返ると、髪が風に揺れていた。
「どうした?行き先は告げてあっただろう。一人歩きは危ないぞ」
「……星が流れたから……」
出会った時から相変わらず、言葉の足りない返答。
知らないというより、伝える意思が希薄なのだ。
先ほどの思考と相まって、揚羽はの顔をとっくり眺めた。長い髪、旅しているというのに驚くほど白い肌。長いまつげかかる漆黒の瞳。
運命の女───。
「何?」
「いいや、なんでもない」
彼女がソレかもしれないと、一度ならずも考えた。
しかし、
「どうした?」
彼から視線を外し、夜空を睨んだ瞳。
「昔聞いたの。流れ星に願いをかけると叶うんですって……嘘ばっかり……」
「そうか」
オレの死神。
今の所……いや、おそらくは永久(とこしえ)に、
「帰るか」
「ええ」
差し出した手に目もくれず、歩き出した後ろ姿に目を細めた。
2009.3.14