第十二話

「“命をかけられるほどの女”ってのを、まだ探しているのか?」
「心当たりはなくもない」

金髪の男、その問いかけに揚羽は薄く笑んだ。

「……なるほど、しっかりがんばれ色男」










運命の女










革命から数日。
夜空に星が流れた。

「───流れ星か、吉凶両方の意味があるな……」

雷蔵は妻の肩を抱き、不安気に空を見上げた。





揚羽は一人軽い口調で、

「お、流れ星だ。誰か死ぬのかな」
「趣味が悪いわ」

女の声が遮る。
振り返ると、髪が風に揺れていた。

「どうした?行き先は告げてあっただろう。一人歩きは危ないぞ」
「……星が流れたから……」

出会った時から相変わらず、言葉の足りない返答。
知らないというより、伝える意思が希薄なのだ。

先ほどの思考と相まって、揚羽はの顔をとっくり眺めた。長い髪、旅しているというのに驚くほど白い肌。長いまつげかかる漆黒の瞳。

運命の女───。

「何?」
「いいや、なんでもない」

彼女がソレかもしれないと、一度ならずも考えた。
しかし、

「どうした?」

彼から視線を外し、夜空を睨んだ瞳。

「昔聞いたの。流れ星に願いをかけると叶うんですって……嘘ばっかり……」
「そうか」

オレの死神。
今の所……いや、おそらくは永久(とこしえ)に、

「帰るか」
「ええ」

差し出した手に目もくれず、歩き出した後ろ姿に目を細めた。

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2009.3.14