第十五話

光明を見つけた。
それは更紗……いや、タタラの決意。

「沖縄には国王がいないんです。貴族も奴隷もいなかった。みんなが同じで汗して楽しく働いて、軍隊もなく平和で。国民の投票で選ばれた代表が政治を行う。……うらやましかったよ。わたしたちの日本もそんな国にしたいと思う」

彼の役に立ちたかった。
でも何をすればいいのかわからないうちに 死んでしまった。代わりに彼女が指し示す。
この世界の未来に文明があるのならば、できることがあった。
本を書こう。
政治と法律。
ペンが剣より強い時代がもうすぐ到来する。
ならば私は新しい時代に、過去の知識を残そう。
そして、










そして……?










更紗が仲間に受け入れられた。
少し前だったら、半狂乱になっていたかもしれない。だってそれは『タタラ』の否定。だけど今なら少しは受け入れられる。
人気のない廊下で、駆け寄る足音から逃げなかったのもそんな心境の変化だろうか。

っ!」
「更紗」

静かに問いかけると、更紗は涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげた。

「あたしが更紗だと打ち明けちゃったから……もうタタラは、お兄ちゃんはこの世のどこにもいないことだって認める事で……でも、幸せで……ごめんなさい」

頷いて、掴まれた袖をそっと離す。

「私もずっと更紗に冷たくしてごめん。でも成すべきことがわかったから……ありがとう」
!!」

上げた顔に微笑む。
更紗を慰めて、静かに背を向けた。
やはり彼女は眩し過ぎる。



私はこの後三日ほど部屋に籠り、本を書いた。
書き上がったそれをナギへ預け、空っぽの心に問いかける。

「全部……終わっちゃった……」

冷たい風に、髪がひとすじ揺れた。

 top 


2009.7.04→2010.1.10修正