当主様に恋して



会長!仕事してください

生徒会書記の周君。まだ一年なのに、生徒会役員だなんて、偉い。
しかしこの状況はどうなのだろう。泣きつくのとかやめてほしい。
曰く、「生徒会長に仕事をさせてください!!」何故わたしが?と問いかけると、「椿さんなら会長も聞く耳持ちますから、お願いします!」と説き伏せられた。
───嫌だ。
しかし、いい加減出てもらわないと生徒会の運営に支障をきたす。するとどうなるか───芳桂君が怒る。
それはとても怖い。
なんで、副会長なんて引き受けちゃったんだろう。
三双萩君ってば、めんどくさい仕事は人に押し付けるし、適当だし───三ヶ月に一回は彼女が変わるし……って並べてみたら悪い所ばかりじゃないか!
でも笑う時頬に薄ら刻まれる線が好きだなとか、長い髪に指を絡めてみたいなんて考えたら、やだな、ドキドキしてきた。

「椿先輩顔が赤いですよ?」
「赤く ないもん!!」

叫んで、生徒会室を飛び出した。
そして校内をあてもなく歩く。
なんて嘘。本当は彼の行きそう場所は大体わかる。わかってしまう自分もどうかと思うが、そういう環境なのだから仕方ない、と思う……といいな、なんて。
考えているうちに見つけてしまった。
仕方ない、深呼吸をして、と。

「三双萩君……ちょっといいかな?」

彼から斜め45度に視線を逸らして問いかける。
だって、

「判李はこれから私と帰るんだけど?」

女連れなんだもん。
初めて見る顔だ。感想は───ぼんきゅぼん。ウエストはわたしの方が細いし、足も長いと思うけどバストで負けているのが悔しい。どうせ三ヶ月の命だと強がってみてもやっぱり悲しいし、他の女とイチャイチャ(それが彼女の一方的な行為だとしても)している姿なんて見たくはない。

「わかった。今日は先帰れ」
「ちょっと判李!?」
「また明日、な」
「……わかったわよ」

肩を怒らせながらも素直に背を向けた彼女に、少しだけ優越感を感じた。
でもまた明日、かぁ……凹む。
気を取り直して顔をあげ、がんばって視線を合わせる。
うう、首が痛い。

「で、何? 照木からデートの誘いなんて珍しいな」
「ちがーう!!」

からかいの言葉に、頬が朱差すのを感じた。
このまま彼のペースに乗ってはまた遊ばれる。
早口で言い切った。

「生徒会長、仕事しなさい!」
「えー、椿ちゃんやっておいてよ」
「ちゃん言うなー!!」

身体が熱い。心臓が痛い。
ほんとこういう所イヤになっちゃう!普段は苗字でしか呼ばないくせになにが椿ちゃんだ、まったく……もう、その……いやん。
なんて考えている場合じゃない。精一杯の虚勢を貼る為に腰に手を当て、びしっと指を指した。

「いいからお仕事するの!」

すると三双萩君は顎に手を当て、

「照木が可愛くお願いしてくれたら、やってもいい」

と実に良い笑顔を浮かべた。
か、可愛く……?何、可愛くって何!?
混乱した。
そしてわたしは人生最大のミスをする。





「お仕事して欲しい……にゃん?」





死にたい。
にゃんってなんだ、にゃん!?
三双萩君は壁に手を付いて笑ってるし、もう泣きそうだ。

「ごめん、ごめん。超可愛かったからちゃんと仕事する」
「嘘ばっかり!! うわーん!!」

しかして大騒ぎの末、

「手をつないでくれたら泣かない!」

なんて戯言を放ってしまった。
恥ずかしい。
駄目って言われたら自害する!!
だが彼は一瞬きょとんとしたした後満面の笑みを浮かべて、「おう」と頷いて手を握りしめた。
その後のことは緊張し過ぎて覚えていないので割愛する。









2009-06-22

ごめんなさい!土下座するので許してください。
時間は少し飛んで二年のとある放課後。
ちなみに後輩で書記の周君はさようならを言えるひと鳥乃さんのオリキャラをお借りしています。ごめんなさい、そしてありがとうございます!

written by Nogiku.