当主様に恋して



選挙の行方は?


「副会長に立候補しました二年の照木です」

舞台の中央に立って一礼。すると一年生側から黄色い悲鳴があがった。

「「「「先輩がんばってー!!」」」」

それにちらほら「きゃー! お姉様ー!!」という歓声が混じる。椿が苦笑気味に手を挙げると、増々盛り上がりをみせた。

「わたしが生徒会に入ったら───です。 みなさんよろしくお願いします」

演説は大きな拍手と共に幕を下ろした。










目立つことは嫌いじゃない。
だがそれは、「女子剣道部主将」とかそういう方面のみであって、立候補は本意ではなかった。
後に彼女は、あれは騙されたようなものだったと振り返る。

「照木さん生徒会に入ってみませんか?」

担任の言葉に、思わず詰まった。
まじまじと見つめると返って来たのは、感情の読めない綺麗な微笑。

「惇明先生、その冗談面白くありません」
「やだな、真面目な私がそんなこと言うわけないじゃないですか」

椿は胡乱な目つきで惇明を眺めた。
敵にすれば恐ろしく、味方にすると心強いけど怖い(色んな意味で)と専らの噂を持つ人の事。何を考えてこんなことを言い出したのかわからない。
探る目つきで眺めた。オーダーメイドのスーツに、ブランドものの腕時計。公務員の給料では無理な高級品ばかり。整った容姿と相まって、生徒の興味と関心を集めて止まない存在。それが氾惇明だ。

「引き受けてくれたら劇団夏季のプレミアチケットをペアであげます」
「それは当選しなくても?」
「はい、もちろんです」

彼女は力強く頷いた。
彼がほくそ笑んだのにも気づかず。

「お引き受けします!」

落選するに決まってる。
確信と共に拳を握りしめた椿は、まだ自身の人気に気がついていなかった。
その笑顔が崩れるのは当選発表のポスター。

「なんでー!?」

ぶっちぎりで一位という結果に頭を抱えた。次いで、

生徒会長三双萩判李

の文字に絹を絹を引き裂く悲鳴をあげたのだった。







2009-06-23

氾惇明:さようならを言えるひと「願った夢は、」の主人公さんです。
生徒会長当選の経緯。
クラスメイト全員一致で生徒会長に推薦。選挙当日「めんどくさいから適当によろしく」という書き置きと共に消えた彼。しかしクラスメイトは諦めなかった!
推薦人の熱い演説に、美術部の総力を結集した等身大パネル。
そして彼は当人不在で当選という学園史上初の快挙を成し遂げたのだった!

きっと自分からやるなんて言わないよねーと考えた結果こんな経緯が生まれました。惇明先生(実は生徒会担当)は事前調査の結果判李さんが会長になる可能性が高いと考え、彼女を押したのでした(業務が滞ると自分が困るから)

written by Nogiku.