当主様に恋して



彼女の企み

とある昼休み。
彼女は机に沈没していた。

「惇明先生に騙されたー」
「いつまで落ち込んでるんだか」

肩を竦めた少女。
京子は弁当片手に振り返ると、愛らしい顔に不敵な笑みを浮かべた。

「だって生徒会だよ。 しかも副会長!!」
「いや、当選しないと思ってたのあんただけだから」

笑い声に、ふて寝する。

「なったものはしょうがないじゃない。 それより先生からもらったチケット、もちろん私を誘ってくれるんだよね?」
「うん、一緒に行こう」

途端に顔いっぱいに広がった笑顔。

(可愛いなぁーもう。 京子ちゃんの恋愛お助け隊でも発動しますかね!)

そして彼女は笑みを深くしたのだった。









□□□








当日。
椿は携帯を取りだして、周囲をキョロキョロと見回した。
開演まであと十分。
だというのに京子は現れない。
その時、

「きゃー! 開演しちゃう!!」
「急いで急いで!!」
「うわっ」

すごい勢いで突き飛ばされた。
しかして、

「大丈夫か?」

夜の匂いに包まれる。
背伸びしても届かない、長身の男に受け止められていた。

「……三双萩君?」
「悪い、待たせたな」

彼女の顔がクエッションマークでいっぱいになる。
次いで彼が手にしたチケットに気がついた。

「志崎に誘われたんだけど」
(京子ーーーーー!! 計ったなー!!)

心中で絶叫する。
しかし口に出すわけにはいかず、判李の涼しげな顔を見つめた。そして我に帰る。

「急がなくていいのか?」
「うん、走ろう!」

駆け出したその時、慣れないヒールの靴を履いていた事に気づく。

「手、貸せ」
「えっ?」

引かれた手に、胸が高鳴る。
開演のベルがなり響く中、二人は手をつないで走り続けた。







2009-06-28

志崎京子:さようならを言えるひと「願った夢は、」よりお借りしました。
こんなイメージかな?と想像で書いていますので、実際とは違う可能性があります。物語のアイデアは鳥乃さんより。
そして釈明。二話で判李さんが彼女を三ヶ月にいっぺん変えてると書きましたがあれですよ。彼がモテるから仕方ないんです。女の子が寄って来るんです。タラシ違う!
モテる+来る者拒まず+当主=(モテ過ぎて)彼女の入れ替わりが激しそう(しかし彼は一度もフッたことがない)
こんな結論で書きました。

written by Nogiku.