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凍原に咲く雪花

空っぽの封筒

やかんから立ち上がる湯気が窓を白く曇らせた。夜風が立て付けの悪い雨戸を揺らす。
真一郎は短い髪をかきあげ、ちらりと視線を横にやった。
長いまつげはぴくりとも動かない。滑らかな白い肌。桜色のくちびる。胸は信じられないほどゆっくりと上下していた。

───あれから二日経った。
しかし少女は一向に目覚める気配がない。
やはり放っておくべきだったか。だが今更追い出すこともできない。

損な性分だ、と真一郎はひとりごちた。
そして執筆作業を一時中断して、身体を伸ばす。

「仕方ない」

もうすこし様子を見ることにしよう。同時に行方不明の届けが出ていないか調べてみることにする。
真一郎は首をボキボキと鳴らすと、ペンを取って原稿と向かい合った。